「親に遺言書を書いてほしい」その気持ち、言えずにいませんか?
「将来、兄弟ともめたくないから、親には元気なうちに遺言書を準備しておいてほしい」
「でも、どう切り出せばいいんだろう…お金の話みたいで気まずいし、死を催促しているように思われたらどうしよう」
大切なご家族だからこそ、将来の相続について真剣に考えている。それなのに、その想いをなかなか親御さんに伝えられず、一人で悩んでいらっしゃる方は少なくありません。
私たち名古屋高畑駅前司法書士事務所にも、このようなご相談が数多く寄せられます。皆さん、ご家族への深い愛情と、将来への責任感から、真剣に悩んでいらっしゃいます。そのお悩み、決してあなただけのものではありません。
この記事は、単に遺言書の作り方を解説するものではありません。どうすれば親御さんの気持ちを大切にしながら、あなたの真剣な想いを伝えられるのか。もし断られてしまったら、次は何をすべきなのか。これまで多くのご家族のご相談に対応してきた司法書士として、親御さんへの伝え方や、断られた後に検討すべき対応を具体的に解説します。
なぜ親は遺言書を書いてくれない?考えられる5つの心理
「どうして書いてくれないんだろう」と焦る前に、まずは親御さんがなぜ遺言書の作成に抵抗を感じるのか、その心の内を少し想像してみましょう。相手の気持ちを理解することが、円滑なコミュニケーションの第一歩です。実務上、よくお見受けする親御さんの心理には、主に5つのパターンがあります。
- 「死」を意識したくない
最も多いのがこの心理です。遺言書は「死」を前提とする書類。まだまだ元気だと思っている親御さんにとって、自身の死と向き合うことは精神的に大きな負担になります。「縁起でもない」と感じ、話題にすること自体を避けたがるのは、ごく自然な感情なのです。 - 財産の話はタブーだと思っている
特に昔気質の親御さんの中には、「お金の話を人前でするものではない」「親子間でも財産の話は生々しくて気が引ける」という価値観をお持ちの方がいらっしゃいます。子供から財産の話を切り出されると、寂しさや不信感を抱いてしまう可能性も考えられます。 - 子供を信用していないと思われたくない
「自分が遺言書なんて書いたら、子供たちのことを信用していない、仲が悪いと認めるようなものだ」と考えてしまう親御さんもいます。子供たちを信じているからこそ、「遺言書は必要ない」と思い込んでいるケースです。 - 内容を決めるのが面倒・先延ばしにしたい
自分の財産をすべて洗い出し、誰に何をどれだけ残すのかを決める作業は、想像以上に大変で、精神的にも疲れるものです。「いつかやろう」と思いつつも、その面倒さからついつい後回しにしてしまう気持ちは、誰にでも起こりうることでしょう。 - 「うちは揉めない」と楽観視している
「子供たちはみんな仲が良いから、うちの家族に限って相続で揉めるはずがない」という楽観的な見通しです。これは、お子さんたちへの信頼の証でもありますが、残念ながら相続をきっかけに関係がこじれてしまうケースは少なくありません。遺言書がないことのリスクを具体的にイメージできていない状態といえます。
これらの心理を理解するだけでも、親御さんへの言葉のかけ方は変わってくるはずです。より詳しい遺言書作成のメリットについては、別の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
【準備編】親へ話を切り出す前に、まずやるべき3つのこと
感情的に「書いて!」と迫っても、事態は好転しません。いきなり話を切り出して失敗しないために、まずは冷静に準備を整えることが成功への近道です。この3つのステップを踏むことで、あなた自身の考えも整理され、自信を持って話し合いに臨めるようになります。
- 自分の不安を具体的に書き出す
なぜ、あなたは親御さんに遺言書を書いてほしいのでしょうか?「兄弟で揉めそうだから」「不動産の分け方で困りそうだから」「手続きが大変だと聞いたから」。その不安を、一度紙に書き出してみてください。自分の気持ちを客観的に見つめ直すことで、親御さんに伝えるべきことの核心が明確になります。 - 兄弟姉妹と事前に意思疎通を図る
もし可能であれば、他の兄弟姉妹とも事前に話をしておくことをお勧めします。あなた一人が親御さんに話をするよりも、「子供たちみんなの願い」として伝える方が、親御さんも真剣に受け止めてくれやすくなります。「お父さん(お母さん)が亡くなった後、みんなで困らないように、一度お願いしてみない?」と、足並みをそろえておきましょう。 - 遺言書がない場合のリスクを客観的に学んでおく
遺言書がない場合、相続人全員で話し合って財産の分け方を決める「遺産分割協議」が必要になります。この協議がまとまらないと、不動産の名義変更が進めにくくなるほか、預貯金についても原則として遺産分割の対象となります。こうした客観的な事実を知っておくことで、「感情論」ではなく「現実的な問題」として、説得力を持って話ができます。
【実践編】親のタイプ別・遺言書の話の上手な切り出し方
準備が整ったら、いよいよ実践です。しかし、ストレートに「遺言書を書いて」と言うだけでは、うまくいかないかもしれません。ここでは、親御さんの性格や状況に合わせた、4つのアプローチをご紹介します。ご自身の家族に合った方法を選んでみてください。
方法1:第三者の話題をきっかけにする
最も自然で、心理的なハードルが低い方法です。テレビのニュースやワイドショー、知人やご近所の方の相続話などをきっかけに、さりげなく話題を振ってみましょう。
会話例:
「そういえば、さっきテレビで相続の特集をやっていたんだけど、最近は大変みたいだね。〇〇さんのところも、相続で兄弟が大変だったって聞いたよ。うちは大丈夫かな?」
あくまで「よそのお宅の話」として始めることで、親御さんが身構えるのを防ぎ、相続問題への関心を自然に引き出すことができます。特に最近は相続に関する法律の改正も多いので、そうしたニュースをきっかけにするのも良いでしょう。
方法2:自分の将来の不安として相談する形で伝える
「書いてほしい」と要求するのではなく、「自分たちが将来困らないか心配で…」と、子供側の不安を打ち明け、相談するという形で伝えるアプローチです。親が持つ「子供のために何かしてあげたい」という気持ちに優しく働きかけることを目指します。
会話例:
「お父さん(お母さん)に、もしものことがあった時、私たちがどういう手続きをしたらいいのか全然わからなくて…。兄弟で揉めたりしたくないから、お父さん(お母さん)の考えを今のうちに聞かせてもらえないかな?」
謙虚に、頼る姿勢で相談することで、親御さんも「子供たちのために、ちゃんと考えてやらなければ」という気持ちになりやすいものです。このとき、遺言書でどのようなことを決められるのかを少し調べておくと、話がスムーズに進むかもしれません。

方法3:「家族会議」として正式な場を設ける
兄弟姉妹が実家に集まるお盆や年末年始など、家族が揃うタイミングで、改まって話し合いの場を設ける方法です。普段はなかなか話せない真剣なテーマも、こうした機会なら切り出しやすいかもしれません。
進め方のポイント:
事前に「少し大事な話をしたいから、時間を取ってほしい」と伝えておきましょう。会議では、感情的にならず、人の話を最後まで聞くといった簡単なルールを決めておくと冷静な話し合いができます。親御さんの財産を具体的に書き出す財産目録の作成を一緒に手伝う、という提案から始めるのも良い方法です。ただし、この方法は親御さんにプレッシャーを与えかねないため、家族の関係性をよく見極めて慎重に行う必要があります。
方法4:専門家(司法書士)の無料相談に同行を提案する
親子だけではどうしても感情的になってしまう、話が進まない、という場合に非常に有効な方法です。第三者であり、法律の専門家である司法書士が間に入ることで、客観的かつ冷静に話し合いを進めることができます。
誘い方の例:
「相続の専門家が無料で話を聞いてくれるみたいだから、将来のために一度、一緒に勉強しに行ってみない?無理に何かを決めるんじゃなくて、話を聞くだけでもいいみたいだよ」
「相談」や「手続き」と言うと身構えてしまう親御さんでも、「勉強会」「情報収集」という名目であれば、抵抗感が和らぐことがあります。専門家から遺言書がない場合のリスクを客観的に説明してもらうことで、親御さんもその必要性をすんなりと理解してくれるケースは非常に多いです。当事務所でも無料相談を行っておりますので、お気軽にご利用ください。
もし親に断られたら?拒否された後の3つのステップ
いろいろ試してみたけれど、それでも親御さんに「書かない」と断られてしまうこともあるでしょう。そんな時、がっかりしたり、焦ったりする必要はありません。大切なのは、拒否された後にどう行動するかです。ここでは、次に取るべき3つのステップをご紹介します。
ステップ1:まずは受け入れて、冷却期間を置く
「今は書きたくない」という親御さんの気持ちを、まずは一度、そのまま受け止めてあげてください。「そうか、今は考えたくないんだね。わかったよ」と伝えることが重要です。拒否された直後に焦って説得を重ねても、かえって心を閉ざさせてしまい、逆効果です。
無理強いは親子関係を悪化させるだけ。数ヶ月から半年、あるいは一年くらい、この話題には触れずにそっとしておく「冷却期間」を設けましょう。この時間は、お互いが冷静になるために必要な時間なのです。
ステップ2:別の機会に、違うアプローチで再挑戦する
冷却期間を置いたら、タイミングを見計らって、前回とは違うアプローチで再度話題にしてみましょう。例えば、前回は直接的な言い方で失敗したのなら、今度はテレビの話題をきっかけにしてみる。あるいは、親御さんの友人が亡くなった、ご自身の体調に変化があった、といったタイミングも考えられます。
一度で諦める必要はありません。親御さんの気持ちも、時間や状況によって変化するものです。長期的な視点で、根気強く関わっていく姿勢が大切です。

ステップ3:遺言以外の選択肢も検討する(生前贈与など)
何度お願いしても、どうしても遺言書を書いてもらえそうにない。そんな場合は、遺言以外の方法で生前の対策ができないか、視点を切り替えてみましょう。
- 生前贈与:元気なうちに、特定の財産を子供に贈与しておく方法です。ただし、贈与税の問題や、他の相続人との公平性を考える必要があります。
- 生命保険の活用:受取人を指定しておくことで、特定の子供に現金を残すことができます。受取人が指定された生命保険金は、遺産分割の対象外として扱われるため、現金を残す方法として検討できる場合があります。
- 家族信託:親御さんの財産管理を、信頼できる家族(子供など)に託す契約です。認知症対策としても有効で、遺言と同様の機能を持たせることも可能です。
ただし、これらの方法はそれぞれにメリット・デメリットがあり、税金の問題も複雑に絡んできます。エンディングノートのように法的な効力がないものとの違いを正しく理解し、安易な判断はせず、必ず専門家に相談することが不可欠です。
生前贈与と相続の関係については、国の制度も参考になります。詳しくは「不動産の生前贈与|メリット・デメリットと非課税制度を解説」の記事をご覧ください。
参照:相続時精算課税制度
それでも解決しないなら…司法書士に相談という選択肢
「親子だけでは、もうどうにもならない…」
そう感じたら、ぜひ私たち司法書士のような専門家を頼ってください。専門家に相談することは、決して特別なことではありません。むしろ、感情的な対立を避けながら状況を整理するための、有効な選択肢の一つです。
司法書士にご相談いただくことで、具体的に次のようなお手伝いができます。
- 中立的な立場で親子間の話し合いを整理します。
利害関係のない第三者だからこそ、お互いの本音を引き出し、冷静な話し合いの場を作ることができます。 - 法的なリスクや選択肢を客観的に説明し、親御さんの誤解を解きます。
「うちは揉めない」と思い込んでいる親御さんにも、専門家の口から客観的な事実や統計をお伝えすることで、納得していただけるケースが多くあります。 - 「何から手をつけていいか分からない」「面倒だ」という親御さんの負担を軽くするため、財産資料の整理や公証役場との事前調整など、遺言書作成に必要な準備をサポートします。
「面倒だ」という親御さんの負担を、財産調査から公証役場とのやり取りまで、すべて代行することで解消します。
当事務所の代表司法書士は、会社員経験や司法試験での挫折など、多くの回り道をしてきました。だからこそ、教科書通りの対応ではなく、ご相談者様一人ひとりの気持ちに寄り添うことを何よりも大切にしています。料金が心配な方も、まずは無料相談で、あなたの不安なお気持ちをそのままお聞かせください。
ご家族だけで抱え込まず、専門家に相談することで、状況に応じた具体的な対応を検討しやすくなります。
まずは無料相談でお話をお聞かせください。
まとめ:焦らず、親の気持ちを尊重しながら一歩ずつ
親御さんに遺言書を書いてもらうことは、とてもデリケートで、一朝一夕にはいかない問題です。この記事でご紹介した方法を試しても、すぐにはうまくいかないかもしれません。
しかし、最も大切なのは、焦らないこと。そして、親御さんの気持ちを尊重し、対話を続けることです。「あなたのために」「家族みんなのために」というあなたの真摯な想いは、きっといつか伝わります。
この記事を読んだことで、あなたが次に何をすべきかが見え、少しでも前向きな気持ちで次の一歩を踏み出せることを心から願っています。
もし、一人で抱えきれなくなったらいつでもお問い合わせください。状況を整理し、必要な手続きや対応方法を一緒に検討します。

