相続法改正のポイント

相続法が約40年ぶりに大幅に改正されます。相続法とは、相続についてのルールを定めた民法の第五編のことをいいます。相続法という名の法律があるわけではありません。正確には民法の改正ということです。大改正の理由は、簡潔にいいますと、時代とともに相続法の規定が市民の家族観や相続観と合わなくなってきているからです。

改正された分野は大きく分けて6つです。ここでは改正点の主なポイントを簡潔に示し、次頁以降で詳しく解説したいとおもいます。

 

1. 配偶者の居住権を保護するための方策

・短期配偶者居住権の創設による配偶者保護(2020年4月1日から)

配偶者が被相続人所有の建物に無償で居住していた場合、遺産分割によって当該建物の帰属が確定するまでの間(最低でも6か月)、引き続きその建物を無償で使用することができるようになります。

 

・長期配偶者居住権の創設による配偶者保護(2020年4月1日から)

この権利の創設により、配偶者は終身まで建物に無償で居住することが認められるようになります。

 

2. 遺産分割等に関する見直し

・特別受益の持戻し免除の意思表示の推定(夫婦間で行った居住用不動産の贈与等の保護)(2019年7月1日から)

婚姻期間が20年以上の配偶者に対する居住用不動産の生前贈与は、みなし相続財産に加えないこととなります。改正前は、遺言などでその旨を記しておかなければ遺産の先渡しを受けたものとして取り扱われ配偶者が相続時に取得できる財産が少なくなっていました。

 

・預貯金の仮払い制度の創設(2019年7月1日から)

改正前は、相続が開始すると被相続人名義の口座は凍結され、その解約には相続人全員の署名・実印での押印・印鑑証明書が必要でした。そのため相続人の中に行方不明者や非協力的な方がいると預金解約ができず、葬式費用や当面の生活費を捻出することができない事態に陥ることがありました。そこで、今回の改正により遺産分割協議成立前でも相続人の一人が単独で一定金額を引き出すことを可能にしました。

 

・遺産分割前に財産が処分された場合の不公平の是正(2019年7月1日から)

改正前は、遺産分割前に共同相続人の1人が相続財産を処分(使い込みや売却)してしまった場合、財産取得につき計算上相続人間で不公平が生じていましたが、それを是正しました。

 

3. 遺言制度に関する見直し

・自筆証書遺言の方式の緩和(2019年1月13日から)

改正前、自筆証書遺言は全文を自筆しなければ全て無効とされていました。これが遺言を書くハードルを上げ国民に遺言が浸透しませんでした。そこで、今回の改正で財産目録の部分については自筆でなくワープロやコピー添付なども可能としました。

 

・法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(2020年7月10日から)

改正前は、自筆証書遺言を自己で保管しなければならず、紛失・隠匿・偽造のおそれがあるという問題点がありました。そこで、自筆証書遺言を法務局で保管するというサービスが創設されました。
なお、この制度を利用すると遺言書の検認手続きが不要となります。

 

4. 遺留分制度に関する見直し

・遺留分の金銭債権化(2019年7月1日から)

改正前は、遺留分の請求により、目的物の返還請求として相続財産が不動産や株式等の場合、共有状態となり、いたずらに紛争を長引かせ複雑化させていました。そこで、今回の改正により遺留分権利者は侵害者に対して、物ではなく侵害相当額の金銭の支払いを請求できることとしました。

 

・遺留分算定方法の見直し(2019年7月1日から)

改正前は、相続人に対する生前贈与は時期を問わず遺留分の算定基礎に含まれることとされていました。はるか昔にされた生前贈与も遺留分を算定するための財産の基礎とされていたのです。これを今回の改正により、相続開始前10年と制限を設けました。

 

5. 相続の効力等に関する見直し

・「この財産は~に相続させる」との遺言があった場合、法定相続分を超える部分については登記等しなければ第三者に権利を主張できなくなりました。(2019年7月1日から)

これにより、相続登記をはやくすることの重要性が増しました。

 

・遺言執行を妨げる相続人の行為は善意の第三者に主張できなくなります。(2019年7月1日から)

改正前は、遺言執行者がおかれている場合に、相続人が遺言を妨げる行為を行った場合、誰に対してもその行為の無効を主張できました。それが改正後は、善意の第三者に主張できなくなります。

 

6. 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策(2019年7月1日から)

相続人以外の親族(長男の嫁など)が、被相続人の療養看護等を行い被相続人の財産の維持・増加に寄与した場合、相続人に対して金銭(特別寄与料)の請求をすることができるようになりました。改正前は、相続人以外の者にこのような権利は認められていませんでした。

当然ですが、当事務所は相続法改正に対応しています。

 

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