Archive for the ‘その他’ Category

相続した土地を国が引き取る制度が開始されました(相続土地国庫帰属制度)

2023-04-28

相続土地国庫帰属制度とは?わかりやすく解説

「活用できず、売ることもできない土地を相続してしまった…」これまで、このような土地の所有権を手放す有効な手段はほとんどありませんでした。利用価値のない土地は買い手がつかず、自治体も寄付を受け付けてくれないため、管理の負担や固定資産税を払い続けるしかないのが実情でした。結果として放置され、所有者が分からなくなる「所有者不明土地」が社会問題となっています。

こうした問題の多くが相続をきっかけに発生することから、国は相続登記の義務化と並行して、新たな選択肢を創設しました。それが2023年4月27日から始まった「相続土地国庫帰属制度」です。

この制度を一言で説明すると、「相続または遺贈によって取得した不要な土地を、一定の要件を満たした場合に、審査手数料と負担金を国に納めることで国に引き取ってもらう制度」です。

借金などマイナスの財産が多い場合に検討される相続放棄は、預貯金などのプラスの財産も含めてすべての相続権を放棄する手続きです。しかし、この国庫帰属制度を使えば、他の価値ある財産は手元に残しつつ、問題の土地だけを手放すことが可能になります。所有者不明土地問題の解決に向けた、画期的な選択肢と言えるでしょう。

制度のメリット・デメリットは?どんな人が使うべき?

相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を抱える方にとって大きな救いとなり得ますが、誰にとっても最善の策というわけではありません。メリットとデメリットを正しく理解し、ご自身の状況に合っているか慎重に判断することが重要です。

メリット:管理の負担や将来のリスクから解放される

相続した不要な土地の問題が解決し、安堵の表情を浮かべる相談者

この制度を利用する最大のメリットは、土地を所有し続けることによる精神的・金銭的な負担から解放される点にあります。

  • 継続的な支出がなくなる:毎年課税される固定資産税の支払いがなくなります。また、遠方の山林や原野であっても、定期的な草刈りや樹木の伐採といった管理コストが不要になります。
  • 将来の不安を解消できる:ご自身が亡くなった後、子供や孫に「負動産」として負担を押し付けてしまう心配がなくなります。次の世代に問題を先送りせず、ご自身の代で解決できるという点は大きな安心材料となるでしょう。
  • 必要な財産は維持できる:預貯金や自宅など、手元に残したい財産は相続しつつ、不要な土地だけを切り離して手放せる点は、相続放棄にはない大きな利点です。

デメリット:費用と厳しい要件がハードルに

一方で、この制度には無視できないデメリットも存在します。それは、決して「無償」ではないこと、そして「どんな土地でも引き取ってもらえるわけではない」という厳しい現実です。

まず、申請時には審査手数料、そして承認されれば10年分の土地管理費に相当する「負担金」を支払う必要があります。この負担金は最低でも20万円からと、決して安い金額ではありません。

さらに、国が引き取る土地には厳しい要件が定められています。例えば、建物が建っている土地や、隣地との境界がはっきりしない土地は、そのままでは申請できません。申請前に建物を自費で解体したり、費用をかけて境界を確定させたりする必要があり、追加で高額な費用が発生する可能性も十分に考えられます。

実務家の視点から申し上げると、この要件はかなり厳しいと感じます。「管理費を請求されている原野」や「境界がわからない山林」など、普通に利用できない土地こそ手放したいはずですが、まさにそういった土地が要件で弾かれてしまう可能性が高いのが現状です。過度な期待はせず、冷静に費用対効果を見極める必要があるでしょう。

【司法書士の見解】結局、どんな人が利用を検討すべきか

メリットとデメリットを踏まえた上で、この制度の利用を積極的に検討すべきなのは、以下のような状況にある方です。

「預貯金などプラスの財産があるため相続放棄はしたくないが、相続財産の中に、どうしても売却や活用の見込みが立たない土地が含まれている」

特に、買い手のつかない地方の山林や原野、管理が難しい農地などを相続してしまったものの、他の財産は手放したくないというケースでは、非常に有効な選択肢となります。将来にわたって支払い続ける固定資産税や管理費用、そして子孫への負担を考えれば、負担金を支払ってでも手放す価値は十分にあると言えるでしょう。

逆に、少しでも売却の可能性がある土地や、負担金の額が想定される売却損を大きく上回るような場合は、まずは不動産会社に相談して売却を試みるなど、他の方法を優先すべきです。個々の状況によって最適な解決策は異なりますので、慎重な判断が求められます。

相続土地国庫帰属制度の費用はいくらかかる?

相続土地国庫帰属制度にかかる費用の内訳を示した図解。審査手数料、負担金、付随費用について説明している。

この制度を利用するにあたり、多くの方が気にされるのが費用でしょう。国に土地を引き取ってもらうためには、大きく分けて2種類の費用と、状況によって発生する付随的な費用がかかります。

  1. 審査手数料:土地1筆あたり14,000円
    申請時に、審査のための手数料として法務局に納付します。この手数料は、申請が承認されなかった場合でも返還されません。
  2. 負担金:10年分の標準的な管理費用(原則20万円~)
    審査の結果、承認された場合に納付する費用です。土地の管理には国もコストがかかるため、その10年分を前払いするイメージです。負担金の額は土地の性質によって異なり、原則として20万円ですが、面積や種類によっては変動します。
土地の種類負担金の算定方法
宅地・田・畑など面積にかかわらず原則20万円(一部地域では面積に応じて算定)
森林面積に応じて算定(例:3,000㎡の森林で約53万円)
その他(雑種地、原野など)面積にかかわらず原則20万円
土地の種類に応じた負担金の算定例

さらに注意が必要なのは、申請の前提条件をクリアするために発生しうる「付随費用」です。国もタダで引き取ってくれるわけではなく、管理しやすい状態にしてから申請する必要があるのです。

  • 境界確定費用:隣地との境界が不明確な場合、土地家屋調査士に依頼して境界を確定させる必要があります。費用はケースによりますが、40万円以上かかることも珍しくありません。
  • 建物等の解体費用:土地の上に建物や工作物が残っている場合、申請前に自費で解体・撤去する必要があります。建物の規模によっては100~200万円程度の費用がかかることもあります。
  • 土壌汚染等の調査費用:土壌汚染の可能性がある土地では、調査費用が必要になる場合があります。

このように、審査手数料と負担金だけでなく、土地の状態によっては高額な追加費用が発生する可能性があることを念頭に置いておく必要があります。なお、農地だからといって一律に対象外になるわけではありませんが、要件を満たすためのハードルは決して低くありません。

詳細な負担金の計算については、法務省のウェブサイトもご参照ください。
参照:相続土地国庫帰属制度の負担金|法務省

制度を利用するための2つの要件【申請者と土地】

相続土地国庫帰属制度を利用するには、「誰が申請できるか」という人的要件と、「どんな土地が対象か」という土地の要件の両方を満たす必要があります。ご自身と所有する土地が該当するか、セルフチェックしてみましょう。

【要件1】申請できる人|相続で土地を取得した人が対象

この制度を申請できるのは、以下のいずれかに該当する人です。

  • 相続または遺贈(相続人に対するものに限る)によって土地の所有権を取得した人
  • 共有の土地の場合、共有者の中に相続または遺贈で持分を取得した人がいて、共有者全員で共同して申請する人

ポイントは、あくまで「相続」または「遺贈」が原因で土地を取得した人に限られるという点です。売買や生前贈与などで取得した土地は対象外となります。

ただし、嬉しい点として、この制度は2023年4月27日に開始されましたが、それ以前に相続した土地であっても対象となります。過去の相続で取得し、長年塩漬けになっていた土地についても、この制度を利用できる可能性があるのです。

【要件2】引き取ってもらえない土地の具体的な条件

国が引き取る土地は、将来的に管理や処分がしやすい「きれいな土地」であることが前提です。そのため、管理に過大な費用や労力がかかる土地は、申請が却下されたり、審査で不承認となったりします。具体的には、以下のいずれかに一つでも該当する土地は引き取ってもらえません。

申請段階で却下される土地(却下事由)

  • 建物がある土地
  • ② 担保権(抵当権など)や使用収益権(賃借権など)が設定されている土地
  • ③ 通路など、他人によって使用されることが予定されている土地
  • ④ 特定有害物質により土壌汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地・所有権について争いがある土地

審査の結果、不承認となる土地(不承認事由)

  • ⑥ 崖があり、管理に過大な費用・労力がかかる土地
  • ⑦ 管理や処分を妨げる工作物、車両、樹木などが地上にある土地
  • ⑧ 除去が必要な有体物が地下にある土地
  • ⑨ 隣地所有者と争わなければ管理・処分ができない土地(公道に通じていない土地など)
  • ⑩ その他、通常の管理・処分に過大な費用・労力がかかる土地

特にご相談が多いのが①「建物がある土地」と⑤「境界が明らかでない土地」です。空き家が残っている場合は、まず建物を解体して更地にしなければ申請できません。また、土地の境界が曖昧な場合は、土地家屋調査士に依頼して境界確定測量を行う必要があります。これらの対策には相応の費用と時間がかかるため、事前にしっかりと計画を立てることが不可欠です。

相続土地国庫帰属制度の手続きの流れ

相続土地国庫帰属制度の申請から国庫帰属までの5つのステップを示した手続きの流れの図解。

実際に制度を利用する場合、どのような流れで進むのでしょうか。大まかなステップは以下の通りです。

  1. 法務局への事前相談(任意)
    申請先の法務局は、その土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局の本局です。申請要件が複雑なため、まずは事前相談を利用することをお勧めします。相談は予約制ですが、土地が遠方にある場合でも、お近くの法務局の本局で相談が可能です。
  2. 申請書類の準備・提出
    承認申請書や土地の図面、写真など、必要な書類を準備して法務局に提出します。相続登記の手続きが完了していなくても申請自体は可能ですが、状況によっては事前に相続登記を済ませておくと手続がスムーズになる場合があります。
  3. 法務局による審査(書面・実地調査)
    提出された書類に基づき、法務局の担当者が要件を満たしているか審査します。必要に応じて、担当者が現地を訪れて土地の状況を確認する実地調査も行われます。標準処理期間(目安)は8か月とされており、土地の状況や調査の要否などにより前後します。
  4. 承認・負担金の納付
    審査の結果、要件を満たしていると判断されると、法務局から承認の通知と負担金の納付通知が届きます。通知を受け取ってから30日以内に負担金を納付する必要があります。
  5. 国庫への帰属
    負担金の納付が完了した時点で、土地の所有権は国に移転します。これで、あなたは土地の所有者としての義務と責任から完全に解放されます。

申請書の様式は法務省のウェブサイトで確認できます。
参照:相続土地国庫帰属の承認申請書(PDF)|法務省

制度が使えない場合は?司法書士に相談できること

「要件が厳しくて申請できない」「負担金が高額で断念せざるを得ない」といった場合でも、諦める必要はありません。相続土地国庫帰属制度以外にも、不要な土地を手放すための選択肢は存在します。

  • 売却:たとえ安価であっても、隣地の所有者や近隣の事業者などに需要がないか、不動産会社を通じて探ってみる価値はあります。
  • 相続放棄:相続開始から3ヶ月以内であれば、相続放棄のメリット・デメリットを考慮した上で、すべての財産を放棄するという選択肢があります。
  • 寄付・譲渡:自治体では難しくても、隣地の所有者や、その土地を活用したいという個人・法人に無償で譲渡(寄付)できる可能性があります。

どの方法が最適かは、土地の状況、他の相続財産の内容、そしてご自身の意向によって大きく異なります。複雑な法律や手続きが絡むため、ご自身だけで判断するのは非常に困難です。

このような時こそ、私たち司法書士にご相談ください。名古屋高畑駅前司法書士事務所では、ご相談は無料で承っております。

ご相談いただければ、相続土地国庫帰属制度の利用可能性の診断から、売却や相続放棄といった他の選択肢との比較検討、そして最も有利な解決策のご提案まで、専門家の視点からトータルでサポートいたします。複雑な書類の作成支援や法務局との連絡・手続の代行も可能ですが、状況に応じて必要書類のご準備や内容確認など、ご協力をお願いする場合があります。

一人で悩まず、まずはお気軽にお問い合わせください。あなたの肩の荷を軽くするお手伝いをいたします。

共有名義の農地(田・畑)を単有名義にしたい

2020-06-12

共有名義の農地、なぜ「単独名義」にすべきなのか?

ご親族と共有名義になっている農地(田んぼや畑)について、「管理が大変だから、誰か一人の名義にまとめたい」と考えたことはありませんか?

親から相続した土地が、いつの間にか兄弟姉妹や甥・姪との共有名義になっているケースは少なくありません。現状は問題なくても、そのまま何年、何十年と放置してしまうと、大変な事態を招く可能性があります。

例えば、共有者の一人が亡くなるたびに相続が発生し、所有者がネズミ算式に増えていくのです。気づいたときには、顔も知らない遠い親戚を含む何十人もの共有状態になっていることも…。そうなると、農地を売却したくても、活用したくても、共有者全員の同意を得ることは事実上不可能になり、完全に「塩漬け」の土地になってしまいます。

また、毎年かかる固定資産税の支払いを誰が代表して行うのか、という問題も揉め事の火種になりがちです。

「うちも、そろそろ何とかしないと…」

そんな漠然とした不安が、現実のトラブルになる前に、対策を打つことが重要です。この記事では、複雑な共有名義の農地をスッキリと単独名義にするための、具体的で現実的な方法を、専門家の視点から分かりやすく解説していきます。

農地の名義変更を阻む「農地法」の大きな壁とは

「それなら、他の共有者から土地の持分を買い取ったり、譲ってもらったりすればいいのでは?」と考えるかもしれません。しかし、そこに立ちはだかるのが「農地法」という大きな壁です。

農地は、私たちの食料を生産する大切な基盤です。そのため、宅地などの一般的な不動産のように自由に売買や贈与ができないよう、農地法によって厳しい規制がかけられています。この規制の厳しさは、農地が「市街化区域」にあるか、「市街化調整区域」にあるかで大きく異なります。

市街化調整区域と市街化区域における農地名義変更の難易度比較図。調整区域は許可が必要で困難、市街化区域は届出で比較的容易であることを示している。

原則、自由に売買・贈与ができない「市街化調整区域」の農地

もしあなたの農地が「市街化調整区域」にある場合、名義変更は非常に難しくなります。市街化調整区域とは、市街化を抑え、農地や自然環境を守ることを目的としたエリアです。

この区域で農地の所有権を移転(売買や贈与)するには、農業委員会の「許可」が必要不可欠です。しかし、この許可は「農業を続ける意欲と能力がある買い手(譲受人)であること」などが厳しく問われるため、許可を得ることは非常に困難なのが実情です。単に共有関係を解消したいという理由だけでは、許可が下りることはまずないでしょう。

比較的、手続きが進めやすい「市街化区域」の農地

一方、農地が「市街化区域」にある場合は、話が少し異なります。市街化区域は、すでに市街地を形成している、あるいは今後優先的に市街化を図るべきエリアです。

ただし、農地を農地のまま売買・贈与などで名義変更(所有権移転)する場合は、市街化区域であっても農地法第3条の許可が必要となるのが一般的です。一方で、農地転用(農地を宅地などにすること)を伴う場合は、市街化区域では許可ではなく「届出」という手続きで済みます。届出は許可とは違い、要件を満たしていれば基本的に受理されるため、比較的スムーズに名義変更を進めることが可能です。

農地法の許可が不要となる場合がある!「持分放棄」で単独名義化する方法

「市街化調整区域にあるから、もう打つ手なしか…」と諦めるのはまだ早いです。農地法の厳しい許可を得ずに、共有名義の農地を単独名義にする、たった一つの現実的な方法があります。

その方法とは、「持分放棄(もちぶんほうき)」です。

持分放棄とは、共有者の一人が自らの権利(持分)を手放すことです。そして、放棄された持分は、法律(民法第255条)の規定により、他の共有者のものとなります。

なぜ、売買や贈与ではあれほど厳しかった農地法の許可が、持分放棄では不要なのでしょうか?

その理由は、持分放棄が「単独行為」であるためです。売買や贈与は「売りたい人」と「買いたい人」、「あげたい人」と「もらいたい人」という双方の合意があって初めて成立します。農地法は、この「もらいたい(買いたい)」という意思が、農地を守る観点から適切かどうかを審査するのです。

しかし、持分放棄は、放棄する人が一方的に「自分の権利を放棄します」と意思表示するだけで成立します。もらう側の承諾は必要ありません。当事者の合意が介在しないため、農地法の許可の対象外となるのです。これは、相続で農地を取得する際に許可が不要なのと同じ理屈です。

要注意!持分放棄で発生する「贈与税」のリスクと対策

「持分放棄」は非常に有効な手段ですが、一つだけ大きな注意点があります。それは「贈与税」です。手放す側には関係ありませんが、放棄された持分をもらう側(残りの共有者)に、思わぬ税金がかかる可能性があるのです。

なぜ税金がかかる?「みなし贈与」の仕組み

「ただ権利を放棄しただけなのに、なぜ贈与税がかかるの?」と不思議に思われるかもしれません。

税法上、持分放棄によって他の共有者が経済的な利益を得た場合、それは「実質的にタダで財産をもらったのと同じ」と見なされます。これを「みなし贈与」と呼び、通常の贈与と同じように贈与税の課税対象となるのです。これは、持分放棄を隠れ蓑にした贈与税逃れを防ぐためのルールです。

【具体例】いくら払う?贈与税の計算シミュレーション

では、実際にどれくらいの税金がかかるのでしょうか。具体的な例で見てみましょう。

ケース1:贈与税がかからない場合

  • 農地の全体の評価額:300万円
  • 共有者:Aさん、Bさん、Cさんの3名(持分は各1/3)
  • Cさんが持分放棄をする

この場合、Cさんが放棄する持分の評価額は「300万円 × 1/3 = 100万円」です。この100万円分の価値が、残るAさんとBさんに移転します(Aさん、Bさんがそれぞれ50万円ずつ利益を得る形です)。

贈与税には年間110万円の基礎控除があります。Aさん、Bさんそれぞれが受け取る利益(50万円)は110万円の範囲内なので、このケースでは贈与税はかかりません。

ケース2:贈与税がかかる場合

  • 農地の全体の評価額:900万円
  • 共有者:Aさん、Bさんの2名(持分は各1/2)
  • Bさんが持分放棄をする

この場合、Bさんが放棄する持分の評価額は「900万円 × 1/2 = 450万円」です。この450万円分の価値が、すべてAさんに移転します。

Aさんが受け取る利益(450万円)から基礎控除(110万円)を引いた340万円が課税対象となります。贈与税の税率は累進課税ですが、この場合の税率は20%で、控除額が25万円なので、

(450万円 – 110万円)× 20% – 25万円 = 43万円

となり、Aさんは約43万円の贈与税を納める必要があります。

対策:贈与税がかからないケースとは?

シミュレーションからも分かる通り、贈与税を回避するための最も重要なポイントは、「放棄によって受け取る持分の評価額を、年間の基礎控除110万円以下に収めること」です。

ただ、持分放棄を検討している農地の場合、固定資産税評価額などを基に計算すると、持分評価額が110万円を超えるケースはほぼないのではないでしょうか。事前に固定資産税の納税通知書などで評価額を確認し(無税であれば届いていません)、ご自身のケースで贈与税がかかりそうか、おおよその見当をつけておくことが大切です。また、相続税の基礎知識を理解しておくことも、将来的な税金対策に役立ちます。

参照:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

司法書士が解説!持分放棄の手続きを円滑に進める3つの秘訣

持分放棄は法的に有効な手段ですが、手続きをスムーズに進め、親族間のトラブルを避けるためには、いくつか押さえておくべき秘訣があります。ここでは、数多くのご相談を受けてきた司法書士の視点から、3つの重要なポイントをお伝えします。

秘訣1:他の共有者への「事前相談」と「合意形成」

法律上、持分放棄は「単独行為」であり、他の共有者の同意は不要です。しかし、だからといって、いきなり「持分を放棄しました」と事後報告するのは絶対にやめましょう。親族間に深刻な亀裂を生む原因になりかねません。

大切なのは、手続きを始める前の丁寧な「根回し」です。

  • なぜ単独名義にしたいのか、その理由(管理の負担、将来の相続への懸念など)を誠実に伝える。
  • 持分をもらう側には、贈与税や不動産取得税の負担が生じる可能性があることを正直に話す。
  • 固定資産税の負担がどう変わるのかも説明し、相手の理解と納得を得る。

登記手続きを進める上では、結局のところ他の共有者の協力(書類への署名押印や住民票の提供など)が必要になります。円満な合意形成こそが、成功への一番の近道なのです。

秘訣2:持分放棄による名義変更(登記)手続きの流れ

関係者の合意ができたら、法務局で不動産の名義変更(所有権移転登記)を行います。手続きの全体像を把握しておきましょう。

  1. 持分放棄の意思表示:放棄する人が、他の共有者に対して「持分を放棄する」という意思を明確に伝えます。(口頭でも有効ですが、後のトラブル防止のため書面が望ましいです)
  2. 登記必要書類の準備:関係者それぞれが必要な書類を集めます。
    【放棄する人】印鑑証明書、登記識別情報(または登記済権利証)、固定資産評価証明書、実印
    【持分をもらう人】住民票、認印
  3. 登記申請書の作成:「持分放棄」を原因とする持分移転登記申請書を作成します。
  4. 法務局への登記申請:不動産の所在地を管轄する法務局に、書類一式を提出します。登録免許税(固定資産税評価額の2%)の納付も必要です。
  5. 登記完了:申請から2週間ほどで登記が完了し、新しい登記識別情報通知(旧権利証)が発行されます。
  6. 農業委員会への届出(該当する場合):相続等や共有者の持分放棄などにより、農地法第3条の許可を受けずに農地の権利を取得した場合は、農地法第3条の3に基づく届出が必要となることがあります。届出期限は「権利を取得した日から10か月以内」と案内されるのが一般的です。

秘訣3:手続きは司法書士に依頼するという選択肢もある

ご覧の通り、持分放棄の手続きには専門的な書類作成や法務局とのやり取りが伴います。特に、親族間のデリケートな調整が必要なケースでは、専門家である司法書士に依頼することをおすすめします。

司法書士にご依頼いただくことで、以下のようなメリットがあります。

  • 複雑な登記書類をミスなく正確に作成できる。
  • 他の共有者に対し、専門家の立場から中立的に手続きを説明し、理解を得やすくなる。
  • 法務局との煩雑なやり取りをすべて代行してもらえる。
  • 贈与税のリスクを事前にシミュレーションし、必要に応じて提携税理士と連携して対応できる。

ご自身で進める手間や時間を考えれば、専門家に任せる安心感は大きな価値となるはずです。当事務所では、持分放棄の手続きについて無料で相談することができますので、お気軽にご活用ください。

持分放棄以外の選択肢は?他の方法との比較

ここまで持分放棄を中心に解説してきましたが、他の方法はないのでしょうか。主な選択肢と比較してみましょう。

方法メリットデメリット・注意点農地法許可(市街化調整区域)
持分放棄農地法の許可が不要もらう側に贈与税・不動産取得税がかかる可能性がある不要
売買手放す側は対価を得られる親族間でも適正価格での取引が必要。譲渡所得税がかかる場合がある必要(許可は困難)
贈与当事者の合意で柔軟にできるもらう側に贈与税・不動産取得税がかかる必要(許可は困難)
共有物分割現物で土地を分ける、または代金を支払って解消する方法農地を分筆する必要があり、手続きが複雑。農地法の許可が必要な場合がある原則必要
持分放棄と他の方法の比較

このように比較すると、市街化調整区域にある農地の共有関係を解消する方法としては、やはり「持分放棄」が最も現実的で有効な手段であることがお分かりいただけるかと思います。なお、どうしても不要な土地を手放したい場合は、相続した土地を国が引き取る制度なども選択肢になる場合があります。

共有名義の農地に関するよくあるご質問(Q&A)

Q. 共有者の一人と連絡が取れない、行方不明の場合はどうすればいいですか?

A. 持分放棄の手続きは、行方不明の共有者がいると進めることができません。この場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てるなど、法的な手続きが必要になります。非常に複雑な手続きとなるため、まずは専門家にご相談ください。

Q. 持分放棄の手続きに費用はどれくらいかかりますか?

A. ご自身で手続きを行う場合、登録免許税(固定資産税評価額の2%)と、印鑑証明書などの取得実費がかかります。司法書士に依頼する場合は、これに加えて司法書士報酬が必要となります。報酬は事案によって異なりますので、まずはお見積りをご依頼ください。

Q. 単独名義になった後の農地はどうすればいいですか?

A. ご自身で耕作を続けるのが基本ですが、もし農業を続けるのが難しい場合は、地域の農業委員会に相談し、農地中間管理機構(農地バンク)に貸し出すなどの活用方法を検討することができます。

共有名義の農地問題は、時間が経てば経つほど複雑化し、解決が困難になります。一人で悩まず、まずは専門家の視点からのアドバイスを受けてみませんか。当事務所では、ご相談を承っています。何から手をつければ良いか分からない、という段階でも全く問題ありません。解決への第一歩を、私たちと一緒にはじめましょう。まずは無料相談をご利用ください

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー