相続関係説明図とは?手続きをスムーズにする便利な道具です
ご家族が亡くなられた後、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約など、やらなければならない手続きの多さに戸惑いや不安を感じていらっしゃるかもしれません。このような相続手続きで、相続関係を整理するために用いられる書類が「相続関係説明図」です。
相続関係説明図とは、一言でいうと「誰が亡くなり(被相続人)、誰が相続人になるのか」を一目でわかるようにまとめた家系図のようなものです。それぞれの氏名や生年月日、続柄などを線で結んで図にすることで、複雑な家族関係も明確になります。
この記事を読めば、相続関係説明図の役割から具体的な作り方、注意点までを理解し、ご自身で作成できるようになります。まずは、この便利な道具がどのように役立つのか見ていきましょう。
なお、相続手続き全体の流れについては、「死亡後の手続き一覧|全体像を時系列で解説【チェックリスト付】」で体系的に解説していますので、併せてご覧いただくとより理解が深まります。
主な役割は「戸籍謄本の原本」を返してもらうため
相続関係説明図を作成する最大のメリットは、法務局での相続登記の際に、集めた戸籍謄本一式の原本を返してもらえる(原本還付)点にあります。
相続登記では、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本など、膨大な量の戸籍を提出する必要があります。もし相続関係説明図がないと、全ての戸籍謄本のコピーを付けて原本還付の手続きをとらない限り、法務局は戸籍謄本の原本を返却してくれません。
そこで、戸籍の内容をまとめた相続関係説明図を添付して原本還付を請求することで、戸籍等の原本を返却してもらます。返却された戸籍一式は、銀行や証券会社での預貯金解約手続きなどにそのまま使えるため、何度も同じ戸籍を取り直す手間と費用を省くことができます。
複雑な相続関係を一枚の図で整理できる
もう一つの大切な役割は、相続関係を整理し、明確にすることです。
特に、亡くなった方が養子縁組をしていたり、離婚や再婚を繰り返していて前妻(前夫)との間にもお子さんがいたりする場合、誰が相続人になるのか複雑になりがちです。このような状況でも、相続関係説明図を作成することで、相続人の範囲やそれぞれの関係性が一目でわかるようになります。
相続人が誰なのかを正確に把握することは、その後の遺産分割協議を円滑に進めるための第一歩です。また、税理士に相続税の相談をする際など、他の専門家に状況を説明する資料としても役立ちます。
相続関係説明図の作り方|3ステップで解説
それでは、実際に相続関係説明図を作成する手順を3つのステップに分けて具体的に解説します。この通りに進めれば、初めての方でも迷わず作成できますので、ご安心ください。

ステップ1:まずは必要書類を集める【戸籍謄本が基本】
相続関係説明図を正確に作成するためには、その元となる公的な書類が不可欠です。最も基本となるのが戸籍謄本です。具体的には、以下の2種類の戸籍が必要になります。
- 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
なぜこれらが必要かというと、「誰が法的に相続人であるか」を確定させるためです。例えば、ご自身が知らない間に亡くなった親が養子を迎えていたり、認知している子どもがいたりする可能性もゼロではありません。戸籍を丹念に読み解くことで、こうした想定外の相続人がいないかを確認し、相続人の範囲を確定させます。これは、相続手続きにおける最も重要な最初のステップです。
戸籍の収集は、本籍地の役所で取得できますが、本籍地が遠方であったり、何度も転籍を繰り返していたりすると、全ての戸籍を集めるのは時間と労力がかかります。2024年3月1日から戸籍の広域交付制度が始まり、最寄りの役所で一部の戸籍をまとめて取得できるようになりましたが、それでも全ての戸籍を網羅できないケースもあります。
ステップ2:ひな形を使って書き進める【記載例あり】
必要な戸籍が集まったら、いよいよ図を作成していきます。手書きでもパソコン(WordやExcelなど)で作成しても、どちらでも構いません。記載すべき項目や書き方に決まったルールはありませんが、誰が見ても分かりやすいように作成することが大切です。
ここでは、一般的なケース(亡くなった方に配偶者と子がいる場合)の記載例をご紹介します。

【記載のポイント】
- タイトル:一番上に「被相続人 〇〇 相続関係説明図」と記載します。
- 被相続人の情報:亡くなった方の「氏名」「最後の本籍」「最後の住所」「登記簿上の住所(不動産がある場合)」「生年月日」「死亡年月日」を記載します。
- 相続人の情報:相続人全員について、被相続人との「続柄」「住所」「氏名」「生年月日」を記載します。
- 関係線:被相続人と相続人を線で結びます。夫婦関係は二重線、親子関係は一本線で結ぶのが一般的です。
- 相続しない人:相続放棄をした人や、遺産分割協議によって財産を取得しないことになった人がいる場合は、その旨を氏名の横に書き加えます。(例:「相続放棄」「遺産分割により相続しない」など)
- 作成者情報:図の末尾に、作成年月日と作成者の住所・氏名を記載し、押印します。
法務局のウェブサイトにも様々なケースのひな形が用意されていますので、参考にすると良いでしょう。
ステップ3:提出前にチェック!よくある不備と注意点
作成し終えたら、提出前に必ず最終チェックを行いましょう。もし不備があると、法務局で修正を求められ、手続きが滞ってしまいます。ここでは、私たちが実務でよく目にする、初心者が陥りがちな間違いをチェックリストにまとめました。
- □ 戸籍の情報と一字一句同じか?
氏名や本籍、生年月日などの情報は、必ず戸籍謄本に記載されている通りに、一字一句正確に転記してください。旧字体の漢字などもそのまま写します。 - □ 続柄の表記は正しいか?
「長男」「長女」など、戸籍に記載されている通りの続柄を記載します。養子の場合は「養子」、代襲相続の場合は「代襲者」または「代襲相続人」と明記しましょう。 - □ 関係線は正しく引かれているか?
配偶者は二重線、親子は一本線など、関係性が正しく示されているか確認します。 - □ 亡くなっている相続人はいないか?
相続人の中ですでに亡くなっている方がいる場合、その方の死亡年月日も記載する必要があります。 - □ 必要な情報はすべて記載されているか?
被相続人の「最後の本籍・住所」、相続人の「現在の住所」など、記載漏れがないか再度確認してください。
特に、戸籍の収集や読み解きに不安がある場合は、正確な相続関係説明図を作成することが難しくなります。より詳しい手順については、「相続人調査・戸籍謄本の取得代行について」のページで解説しています。
「法定相続情報一覧図」との違いと使い分け
相続関係説明図とよく似た書類に「法定相続情報一覧図」があります。どちらも相続関係を証明する書類ですが、その性質と利用場面が異なります。違いを理解し、ご自身の状況に合わせて使い分けることが大切です。

| 相続関係説明図 | 法定相続情報一覧図 | |
|---|---|---|
| 作成者 | 自分で作成する(私文書) | 申出人が作成し、登記官が確認した上で認証文付きの写しが交付される |
| 証明力 | 公的な証明力はない | 公的な証明力がある |
| 主な利用場面 | 相続登記(戸籍の原本還付のため) | 金融機関、税務署、年金事務所、相続登記など(戸籍一式の代わりに提出) |
| メリット | ・様式が自由で作成しやすい | ・戸籍一式の代わりに使えるため、手続き先が多い場合に便利 ・必要な通数の写しを無料で交付申請できる |
| デメリット | ・相続登記以外では使えない場合がある | ・作成、申出に手間がかかる ・認証までに時間がかかる場合がある |
【どちらを選ぶべきか?】
- 相続登記だけが目的の場合:ご自身で作成できる「相続関係説明図」で十分です。
- 不動産以外に、複数の銀行や証券口座の相続手続きがある場合:「法定相続情報一覧図」を取得しておくと、各金融機関に戸籍一式を何度も提出する手間が省け、非常に便利です。
法定相続情報一覧図は、一度法務局で認証文付きの写しの交付を受ければ、その写しを相続手続きの提出書類として各所で利用できます。
こんなときはどう書く?ケース別の書き方
相続の形はご家庭によって様々です。ここでは、基本的な書き方に加えて、少し複雑なケースでの書き方のポイントを解説します。
【代襲相続が発生している場合】
本来相続人となるはずの子が、被相続人より先に亡くなっており、その子(被相続人から見ると孫)が代わりに相続することを「代襲相続」といいます。この場合、先に亡くなった子の情報(氏名、死亡年月日)を記載し、その下に孫の情報を記載します。孫の続柄には「代襲者」または「代襲相続人」と明記し、関係性がわかるように線を引きます。
【相続人の中にすでに亡くなっている方がいる場合(数次相続)】
遺産分割協議が終わらないうちに相続人の一人が亡くなってしまい、次の相続が開始されることを「数次相続」といいます。この場合、亡くなった相続人の情報(氏名、死亡年月日)を記載し、その相続人の相続人(配偶者や子など)の情報をさらに書き加えます。その方の氏名の横に「(亡〇〇の)相続人」と記載すると分かりやすいでしょう。
【離婚・再婚や養子縁組がある場合】
被相続人に離婚歴があり、前妻(前夫)との間に子がいる場合、その子も相続人になります。現在の配偶者と同様に、親子関係を線で結んで記載します。
また、養子も実子と同じ相続権を持ちますので、続柄に「養子」と明記して図に加えます。特に兄弟姉妹が相続人となるケースで養子縁組があると、相続関係が非常に複雑になるため注意が必要です。
相続関係説明図の作成で困ったら司法書士にご相談ください
ここまで相続関係説明図の作成方法について解説してきましたが、いざご自身で取り組もうとすると、難しく感じる点もあるかもしれません。
- 戸籍を集めてみたが、出生まで遡るのが大変で途中で挫折してしまった
- 古い戸籍が手書きで書かれていて、正確に読み解く自信がない
- 相続関係が複雑で、どのように図にすれば良いかわからない
- 仕事や介護で忙しく、手続きに時間をかける余裕がない
このような状況で無理にご自身で進めようとすると、かえって時間がかかったり、不備があってやり直しになったりすることもあります。
相続関係説明図の作成は、司法書士のような専門家に依頼することで、戸籍の確認や書類作成を適切に進めやすくなります。当事務所にご依頼いただければ、相続関係説明図の作成はもちろん、その前提となる戸籍謄本の収集からお手伝いいたします。さらに、その後の預貯金の解約手続きや不動産の相続登記まで、相続に関する手続きをまとめて代行することも可能です。
相続人調査や相続関係説明図の作成に不安がある場合は、専門家に相談することで、戸籍の確認や手続きの見通しを整理しやすくなります。当事務所では、ご不安な皆様が安心してご相談いただけるよう、無料相談を実施しております。まずはお気軽にお問い合わせください。

