遺言書の種類を司法書士が徹底比較!特徴・費用・選び方を解説

遺言書とは?作成する目的と法的な効力

「そろそろ将来のことを考えて、遺言書でも書いておこうかな…」
そうお考えになったとき、多くの方がまず思い浮かべるのは、ご自身の財産を誰にどのように残すか、ということではないでしょうか。

遺言書は、ご自身の亡き後に財産を巡ってご家族が争うことを防ぎ、大切な方々へご自身の想いを法的な形で確実に伝えるための、非常に大切なメッセージです。単に財産を分けるための事務的な書類ではなく、残されるご家族への最後の愛情表現ともいえるでしょう。

時々、「遺書」と混同されることがありますが、両者は全く異なります。遺書が主に感情や感謝を伝える手紙であるのに対し、遺言書は民法という法律で定められたルールに則って作成され、法的な効力を持つ文書です。具体的には、以下のような効力があります。

  • 相続分の指定:誰にどの財産をどれだけ相続させるかを指定できます。
  • 遺産分割方法の指定:不動産はこの子に、預貯金はあの子に、といった具体的な分け方を指定できます。
  • 相続人以外への遺贈:お世話になった方や団体など、相続人ではない人にも財産を渡すことができます。
  • 子の認知:婚姻関係にない男女間に生まれた子を自分の子として法的に認めることができます。
  • 遺言執行者の指定:遺言の内容を実現するための手続きを行う人(遺言執行者)を指定できます。

このように、遺言書はご自身の意思を法的に実現するための強力なツールです。だからこそ、法律で定められた形式を守って作成することが何よりも重要になります。

【一覧比較表】3種類の遺言書、あなたに合うのはどれ?

遺言書には、主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、どの方法が最適かは、ご自身の状況や遺言書に何を求めるかによって大きく異なります。

まずは全体像を掴んでいただくために、それぞれの特徴を一覧表にまとめました。ご自身がどのタイプに当てはまりそうか、チェックしてみてください。

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類の遺言書が机の上に並べられている比較イメージ。
自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
作成方法全文・日付・氏名を自書し押印。
※財産目録はパソコン作成等も可
公証人と証人2名以上の立会いのもと作成自分で作成・封印し、公証人と証人に証明してもらう
費用ほぼ0円
(法務局保管制度利用時は3,900円)
財産額に応じた公証人手数料+専門家報酬公証人手数料13,000円+専門家報酬
メリット・費用がかからない
・いつでも手軽に作成できる
・無効になるリスクがほぼない
・紛失、改ざんの心配がない
・検認が不要で相続手続きがスムーズ
・内容を誰にも知られない
・パソコン作成や代筆が可能(署名は自署)
デメリット・形式不備で無効になりやすい
・紛失、改ざんのリスクがある
・家庭裁判所の検認が必要
・費用と手間がかかる
・証人が2名必要
・内容の不備で無効になるリスクがある
・紛失、改ざんのリスクがある
・家庭裁判所の検認が必要
検認の要否必要
(法務局保管制度利用時は不要)
不要必要
おすすめな人費用を抑えたい方
(保管制度の利用が前提)
法的な確実性を最優先し、相続トラブルを確実に防ぎたい方内容は秘密にしたいが、遺言の存在は証明したいという特殊なニーズのある方
3種類の遺言書 比較一覧表

いかがでしょうか。それぞれの遺言書に、かなり違いがあることがお分かりいただけたかと思います。次章からは、一つひとつの遺言書について、さらに詳しく掘り下げていきましょう。

自筆証書遺言|手軽さと費用を重視する方向け

自筆証書遺言は、その名の通り、遺言者本人が全文、日付、氏名を自筆で書き、押印することで作成する遺言書です。最も手軽で、多くの方が「遺言書」と聞いてイメージする方法かもしれません。

しかし、この手軽さの裏には、専門家として見過ごせない大きなリスクが潜んでいます。安易に選んでしまうと、かえってご家族に大きな負担をかけてしまう可能性もあるのです。

メリット:費用を抑え、いつでも作成・修正できる

自筆証書遺言の最大のメリットは、何といってもその手軽さと費用の安さです。
紙とペン、そして印鑑さえあれば、思い立ったその日に自宅で作成することができます。公証役場へ行ったり、誰かに依頼したりする必要がないため、費用は基本的にかかりません。

また、ご自身の気持ちや財産状況が変わった際に、比較的簡単に書き直したり、新しいものを作成したりできる点もメリットといえるでしょう。

デメリット:無効リスクが高く、死後に手間がかかる

司法書士として、私たちが最もお伝えしたいのが、このデメリットの部分です。自筆証書遺言は、法律で定められた形式が非常に厳格で、一つでも要件を欠くと無効と判断される可能性があります。

  • 日付の記載がない、または「令和〇年〇月吉日」のように日付が特定できない
  • 押印がない
  • 財産目録以外の部分をパソコンで作成してしまった
  • 夫婦で1枚の紙に連名で書いてしまった
  • 内容を訂正した際に、法律で定められた方式を守っていない

これらは、実際に遺言が無効と判断されたケースでよく見られるミスです。せっかく想いを込めて書いた遺言書が、ほんの少しの形式不備で水の泡となってしまうのは、あまりにも悲しいことです。

さらに、亡くなった後に遺言書が見つかった場合、相続人は家庭裁判所で「検認」という手続きを経なければなりません。これは遺言書の偽造や変造を防ぐための手続きで、全ての相続人に通知され、手間と時間がかかります。また、自宅で保管していると、紛失してしまったり、一部の相続人に隠されたり、書き換えられたりするリスクもゼロではありません。

【法改正】法務局の保管制度でデメリットを軽減できる

こうした自筆証書遺言の多くのデメリットをカバーするために、2020年7月から新しい制度が始まりました。それが「自筆証書遺言書保管制度」です。

これは、作成した自筆証書遺言を法務局で預かってもらえる制度です。この制度を利用するメリットは非常に大きく、自筆証書遺言を選ぶのであれば、必ず利用を検討すべきです。

  • 紛失・改ざんのリスクがなくなる:原本が法務局で厳重に保管されます。
  • 検認が不要になる:相続人の手間と時間を大幅に削減できます。
  • 形式的な不備をチェックしてもらえる:法務局の職員が、日付や署名・押印の漏れなど、外形的な不備がないかを確認してくれます。(※遺言の内容が法的に有効かどうかまではチェックしてくれません)

利用手数料は1通あたり3,900円と比較的安価です。この制度の登場により、自筆証書遺言は以前よりも利用しやすく、安全な選択肢になったといえるでしょう。

公正証書遺言|法的な確実性を最優先する方向け

公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が、遺言者ご本人の意思を確認しながら作成する、最も確実で安全性の高い遺言書です。私たち司法書士が遺言書の作成をサポートさせていただく際も、特別な事情がない限り、この公正証書遺言をおすすめしています。

メリット:無効リスクがほぼなく、検認も不要

公正証書遺言の最大のメリットは、その圧倒的な「確実性」です。

  • 形式不備で無効になるリスクが極めて低い:作成のプロである公証人が、法律のルールに則って作成するため、形式不備で無効になる心配はまずありません。また、公証人が遺言者の意思能力(正常な判断能力)も確認するため、「無理やり書かされたのでは?」といった後日の争いも起きにくくなります。
  • 紛失・改ざんの心配がない:作成された遺言書の原本は、公証役場で厳重に保管されます。自宅で保管する必要がないため、紛失したり、誰かに書き換えられたりする心配がありません。
  • 検認が不要で相続手続きがスムーズ:公正証書遺言は、家庭裁判所での検認手続きが不要です。相続が開始したら、すぐに預貯金の解約や不動産の名義変更といった相続手続きに移ることができるため、残されたご家族の負担を大きく減らすことができます。

デメリット:作成に費用と手間がかかる

一方で、公正証書遺言には費用と手間がかかるというデメリットもあります。

まず、公証役場に支払う公証人手数料が必要です。これは、遺言書に記載する財産の価額に応じて法律で定められています。また、作成にあたっては、証人2名以上の立会いが必要です。ご家族やご友人などに頼むこともできますが、遺言の内容を知られてしまうため、守秘義務のある司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。

さらに、作成前には戸籍謄本や不動産の登記事項証明書といった必要書類を集めたり、公証人と遺言内容の打ち合わせをしたりと、ある程度の準備期間が必要になります。

作成費用はいくら?公証人手数料と専門家報酬の目安

公正証書遺言の作成にかかる費用は、大きく分けて「公証人手数料」と「専門家への報酬」の2つがあります。

1. 公証人手数料
これは公証役場に支払う実費で、相続させる財産の価額によって変動します。以下に一例を挙げます。

目的の価額手数料
100万円以下5,000円
100万円超200万円以下7,000円
200万円超500万円以下13,000円
500万円超1,000万円以下20,000円
1,000万円超3,000万円以下26,000円
3,000万円超5,000万円以下33,000円
公証人手数料の計算例 (令和7年10月1日に改正されました)

※全体の財産が1億円以下の場合は、上記手数料に13,000円が加算されます。

2. 専門家への報酬
司法書士や弁護士、行政書士に遺言書の作成サポートを依頼した場合に発生する報酬です。事務所によって異なりますが、一般的には10万円~50万円程度が目安となります(銀行は最低でも150万円位から)。これには、遺言内容のご相談、必要書類の収集代行、公証人との打ち合わせ、証人の手配などが含まれます。

公証役場で、公証人から公正証書遺言の説明を受けるシニア夫婦。法的な確実性と安心感を象徴する画像。

秘密証書遺言|内容は秘密にしつつ存在は証明したい方向け

秘密証書遺言は、遺言の内容は誰にも知られたくない、しかし遺言書を作成したという事実だけは公的に証明しておきたい、という少し特殊なニーズに応えるための遺言書です。

遺言者本人が作成・署名押印した遺言書を封筒に入れ、同じ印鑑で封印します。それを公証役場に持参し、公証人と証人2名以上の前で自分の遺言書であることを申し出て、その存在を証明してもらう、という流れになります。実務上、利用されるケースは非常に少ないのが現状です。

メリット:遺言内容の秘密を保持できる

最大のメリットは、その「秘匿性」です。遺言書に封をするため、作成に立ち会う公証人や証人でさえ、その内容を見ることはありません。ご家族にも知られたくない内容がある場合など、プライバシーを最大限に守ることができます。

また、自筆証書遺言と異なり、本文はパソコンでの作成や第三者による代筆も認められています(署名・押印は必ず本人が行う必要があります)。そのため、手が不自由で自筆が難しい方でも利用できるという側面があります。

デメリット:無効リスクがあり、実用性に乏しい

秘密証書遺言がなぜあまり利用されないのか。それは、手間やコストの割にデメリットが大きいからです。

まず、公証人は遺言書の「存在」を証明するだけで、その「内容」まではチェックしません。そのため、遺言の内容に法律的な不備があれば、自筆証書遺言と同様に無効になってしまうリスクがあります。

さらに、公証役場で原本を保管してくれるわけではないため、自分で保管しなければならず、紛失や改ざんのリスクも残ります。そして何より、費用をかけて公証役場で手続きをするにもかかわらず、相続開始後には家庭裁判所での「検認」が必要になるのです。

これらの点を考慮すると、「法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言」や、確実性の高い「公正証書遺言」を選択する方が、はるかに合理的である場合がほとんどです。

【司法書士が指南】あなたに最適な遺言書の選び方

ここまで3種類の遺言書について解説してきましたが、「結局、自分はどれを選べばいいの?」と迷われる方もいらっしゃるでしょう。ここでは、具体的なケースごとに、私たち司法書士がどの遺言書をおすすめするか、その理由とともにお伝えします。

ケース1:費用をかけず、まずは手軽に始めたい方

→ おすすめ:法務局の保管制度を利用した「自筆証書遺言」

「遺言書は作りたいけれど、あまり費用や手間はかけたくない」という方には、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言が適しています。
費用を3,900円に抑えつつ、自筆証書遺言の大きなデメリットであった「紛失・改ざんリスク」や「検認の手間」を解消できるため、コストパフォーマンスに優れた選択肢といえます。

ただし、法務局はあくまで形式的なチェックをするだけで、遺言の内容が法的に有効かまでを判断してくれるわけではありません。内容に少しでも不安がある場合は、一度専門家にご相談いただくことをおすすめします。

ケース2:相続トラブルを確実に防ぎ、相続人に手間をかけさせたくない方

→ おすすめ:「公正証書遺言」

「費用がかかってもいいから、とにかく法的に万全なものを作りたい」「自分の死後、家族に面倒な手続きで迷惑をかけたくない」
このようにお考えの方には、公正証書遺言が最も確実な選択肢となるでしょう。

無効になるリスクがほぼなく、検認も不要なため、相続手続きが最もスムーズに進みます。財産を確実に、そして円満に引き継がせたいという強いお気持ちがあるなら、公正証書遺言がその想いを最も確実に実現してくれます。残されるご家族への何よりの「安心」のプレゼントになります。

不動産の権利証と家の鍵。不動産相続には遺言書が重要であることを示唆している。

ケース3:不動産を特定の相続人に相続させたい方

→ おすすめ:司法書士に相談の上での「公正証書遺言」

ご自宅やアパートなどの不動産を特定の相続人に渡したい、とお考えの場合も、公正証書遺言が最適です。
なぜなら、相続が発生した後には、不動産の名義を相続人に変更する「相続登記」という手続きが必ず必要になるからです。

公正証書遺言があれば、その遺言書自体が登記手続きにおける強力な証明書類となり、非常にスムーズに名義変更を進めることができます。自筆証書遺言の場合、法務局によっては追加の書類を求められるなど、手続きが煩雑になるケースもあります。

私たち司法書士は、相続登記の専門家です。遺言書を作成する段階から、将来の相続登記までを見据えた、法的に間違いのない、そして手続き的に最もスムーズな内容をご提案することができます。不動産の相続をお考えの方は、ぜひ一度、司法書士にご相談ください。

遺言書作成でよくある質問

ここでは、遺言書の作成に関して、お客様からよく寄せられるご質問にお答えします。

Q1. 遺言書は何歳から作成できますか?

A. 法律(民法)では、満15歳に達した人は遺言をすることができると定められています。
ただし、有効な遺言書を作成するためには、「意思能力」、つまり遺言の内容を正しく理解し、その結果どうなるかを判断できる能力が必要です。そのため、例えば認知症が進行して判断能力が著しく低下していると判断された場合、たとえ遺言書を作成しても後から無効とされてしまう可能性があります。

Q2. 司法書士、行政書士、弁護士、誰に相談するのが良いですか?

A. どの専門家に相談するかは、ご自身の状況によって異なります。それぞれの専門家の特徴は以下の通りです。

  • 司法書士:遺言書作成のサポートはもちろん、その後の不動産の相続登記(名義変更)まで一貫して依頼できるのが最大の強みです。不動産を相続財産に含めたい場合に最もスムーズです。
  • 行政書士:遺言書の作成サポートや、事実証明に関する書類作成の専門家です。ただし、登記申請の代理や、相続トラブルの交渉代理はできません。
  • 弁護士:相続人間で既にもめている、または将来的に争いになる可能性が非常に高い場合に頼りになります。トラブルの交渉代理や訴訟対応ができる唯一の専門家です。

当事務所は司法書士事務所ですので、特に不動産を含む遺言書の作成や、将来の相続手続きまで見据えたご提案を得意としております。

Q3. 一度作成した遺言書を書き直すことはできますか?

A. はい、いつでも書き直すことができます。
遺言者は、生きている間はいつでも、理由を問わず遺言の全部または一部を撤回(取り消し)することができます。新しい日付の遺言書を作成すると、その内容が古い遺言書の内容と矛盾する部分については、新しい遺言書が優先されます。

ご家族の状況や財産の変動など、ライフステージの変化に応じて遺言書を見直していくことは、とても大切なことです。

まとめ:遺言書作成は、想いを確実に繋ぐための第一歩です

今回は、3種類の遺言書「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく解説しました。

  • 自筆証書遺言:手軽で安価だが、無効リスクがある。法務局の保管制度利用が前提。
  • 公正証書遺言:最も確実性が高く、相続トラブルを防ぎたい場合に最適。
  • 秘密証書遺言:内容は秘密にできるが、デメリットが多くあまり使われない。

どの遺言書が最適かは、あなたの想いやご家族の状況によって異なります。大切なのは、それぞれの特徴を正しく理解し、ご自身に合った方法を選ぶことです。

遺言書の作成は、単なる事務手続きではありません。残される大切なご家族へ「ありがとう」の気持ちを伝え、無用な争いから守るための、最後の贈り物です。

「自分にはどの方法がいいのか分からない」「法的に間違いのないものを作りたい」
もし少しでもご不安な点がございましたら、どうか一人で悩まず、私たち専門家にご相談ください。名古屋高畑駅前司法書士事務所(代表司法書士 古島信一/愛知県司法書士会 第2175号/名古屋市中川区高畑1-207)では、代表司法書士である私が、あなたの想いを丁寧にお伺いし、最適な遺言書の作成を心を込めてサポートいたします。ご相談は何度でも無料ですので、どうぞお気軽にご連絡ください。

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