共有名義の農地(田・畑)を単有名義にしたい

親族の共有名義(所有者が2人以上)の農地を単有名義(1人の名義)にしたいという相談をしばしば受けます。

 

農地が市街化区域にあればいいのですが、市街化調整区域にある場合、農地を処分(売買・贈与)することは非常に困難です。市街化調整区域にある農地を処分(売買・贈与)するには農地法の許可が必要なのですが、この許可を得ることができない場合が多いからです。この農地法の規制は、国民の食生活を安定させるため農地を確保する必要性があるからです。

 

市街化区域とは、市街化を促進している地域です。イメージとしては商業施設や住宅が密集している地域です。市街化を促進しているので農地を保護する必要はなく農地を転用・処分(売買・贈与)するにも農地法の許可は必要ありません。
ただし、届出が必要です。届出は報告のようなものですので拒否されることはありません。

 

市街化調整区域とは、市街化が進まないように抑えるため農地や自然を保護することに重点が置かれた地域です。ここでは原則家を建築することができません。そして、農地を保護するために農地を転用・処分(売買・贈与)するには農地法の許可が必要となります。しかし、この許可を得ることが非常に困難な場合が多いのです。
農地法の許可が得られなければ、農地を農地以外に転用したり、売ったり贈与したりすることはできません。

 

そこで共有名義の農地について上記のような「なんとか親族の共有名義(所有者が2人以上)の農地を単有名義(1人の名義)にできないか」という相談があるのです。
その農地が市街化調整区域にあり処分(売買)できないので、せいぜいその管理の負担を1人にしたいということです。このまま何年・何十年も放置しておくと相続が重なり所有者が何十人にもふくれあがり厄介なことになるのです。
なお、農地が共有の場合、先代の相続の際に相続人の共有名義にしてしまったことが多いです。

 

 

本題に入ります。
まず、農地を他の共有者に譲渡する場合にも上記農地法の許可が必要です。
では農地法の許可が得られない場合、共有者から他の共有者への名義変更は不可能なのでしょうか?
実は、可能です。その方法は、「持分放棄」をするのです。不動産の共有者が持分放棄すると他の共有者に持分が移転するのです。これは民法という法律で決められています。もし3人の共有不動産で1人が持分放棄をすると他の共有者の共有持分の割合に応じて帰属することになります。この持分放棄の場合には農地であっても農地法の許可はいりません。

 

なぜ農地を売買・贈与する場合には農地法の許可が必要であるのに、持分放棄の場合には許可は必要ないのでしょうか?
それは、持分放棄は譲受人の承諾が不要な単独行為だからです。売買・贈与は、譲渡する人と譲受ける人の両者の合意がなければ成立しません。しかし、持分放棄は放棄する人が単独でおこなえるのです。他の共有者の意思に反してもできるのです。農地の相続の際に農地法の許可が必要ないのも相続は名義人が亡くなると当然に発生し相続人の合意は必要ないからです。つまり農地法の許可が必要なのは、そこに「譲受けます」という当事者の意思が介在する場合だけなのです。当事者の意思がないものを取り締まっても意味がないからです。

 

 

以上のように、農地が2人以上の共有名義であるときに1人の単有名義にしたい場合、手放したい人が「持分放棄」すればいいのです。
なお、単有名義(1人所有)の不動産は放棄できません。所有者がいなくなっては管理する者がいなくなり困るからです。あくまで共有名義の不動産だけのおはなしです。

 

なお、持分放棄でも贈与税の対象になることに注意してください。持分放棄は実質的に贈与とかわらず、贈与税の潜脱を防ぐためです。

 

 

まとめ
・共有名義の農地で、ある共有者が持分放棄をすると農地法の許可がなくても他の共有者に持分が移転する。
・持分放棄でも贈与税の対象になる。

 

 

農地の相続・名義変更について不安な方は専門家に相談してみてください。

 

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