Archive for the ‘相続’ Category

相続法改正の知識-遺産分割の取り扱いについて

2019-05-10

(1)特別受益の持戻し免除の意思表示の推定(夫婦間で行った居住用不動産の贈与等の保護)

改正前は、夫婦間で自宅を生前贈与(あるいは遺贈)した場合、その譲渡は遺産の先渡しを受けたもの(特別受益)として取り扱い、原則、相続時に配偶者の相続割合から当該譲受け自宅の価格を差し引いた分しか相続できませんでした。すると、配偶者は相続時にはほとんど財産を相続できず老後の生活が困難になることが起こりえたのです。

そこで、このような配偶者を保護するため、長期間婚姻している夫婦間で行った居住用不動産の贈与・遺贈については遺産の先渡しを受けたものとはせず、原則それを考慮せず相続分を計算するこことしました。これは、居住用不動産は通常夫婦の協力によって形成される場合が多く、夫婦の一方が他方にこれを贈与する場合にも一般に贈与という認識が薄いこと、居住用不動産の贈与は配偶者の老後の生活保障を意図してされる場合が多いことなどを考慮したからです。

具体的には、

  1. 婚姻期間が20年以上の夫婦間で
  2. 居住用不動産(土地・建物)を
  3. 贈与または遺贈(遺言で引き継がせる)した場合には

特別受益の持戻し免除の意思表示があったものと推定します。

 

もちろん原則ですから、贈与する配偶者が遺産の先渡しであるとの意思表示をしていれば相続時にこの自宅分を譲受け配偶者の相続分から差し引くことができます。

 

実は、今までも特別受益の持戻しをしなくていいとの意思表示(遺言等で)があれば相続時に特別受益の持戻し計算をしなくてもいいことに相続法(民法)ではなっていました。しかし、法律の専門家以外の方がこのような規定を知っていることはほぼないため活用されていませんでした。

改正前は何もしないと特別受益の持戻し計算がされ、例外的にあらかじめ特別受益の持戻し計算をするなとの意思表示があれば特別受益の持戻し計算はされませんでした。改正後は何もしないと特別受益の持戻し計算はされず、例外的にあらかじめ特別受益の持戻し計算をして下さいとの意思表示をしていれば特別受益の持戻し計算がされることになります。すなわち今回の改正で原則と例外を逆にしたわけです。

 

この特別受益の持戻し免除の意思表示の推定の開始時期(施行日)は、2019年(令和元年)7月1日です。

注意しなければならないのは、居住用不動産の贈与を2019年7月1日以降にしなければならないことです。これより前に贈与し2019年7月1日以降に相続が発生しても適用されません。

 

(2)預貯金(葬式費用・生活費)の仮払い制度の創設

被相続人名義の預貯金口座は、相続が開始すると凍結されてしまいます。正確にいうと口座名義人が亡くなった旨を当該金融機関に報告すると当該口座は凍結され引き出せなくなってしまいます。本人以外の者が窓口で引き出すことはできないので、金融機関に名義人の死亡を報告せず相続人が引き出そうとしてもできません。

相続により凍結された預貯金の解約には相続人全員の署名・実印での押印書類(遺産分割協議書)と印鑑証明書が必要です。しかし、相続人に行方不明の方がいたり、相続手続きに非協力的な相続人がいる場合、遺産分割でもめている場合など、遺産分割協議がまとまらない場合に預金解約に何年もかかることがあります。これでは、葬式費用や病院・施設代金などに被相続人名義の預貯金が使用できず残された相続人が支払いに困ることがありえます。また、亡くなった夫名義の預貯金口座から妻が毎月生活費を引き出していた場合、残された妻は生活ができなくなってしまいます。

そこで、葬式費用や当面の生活費を早急に引き出せる制度を創設しました。ただし、預貯金の全額ではなく上限が設けられています。

      

具体的には、

相続開始時の預貯金の額の3分の1に法定相続分をかけた金額を限度として、各相続人は単独で引き出しができます。ただし、1銀行あたり法務省令で定める額(150万円)を上限とします。

 

例えば、預貯金が900万円あり、相続人は妻と子の2人である場合、

900万円×3分の1×2分の1(法定相続分)=150万円  を妻・子はそれぞれ単独で引き出せることができます。

 

預貯金が一つの金融機関に集中していると最高150万円しか引き出せません。

複数の金融機関に分散して預けていた方が結果的に多くの金額が引き出せることがありえます。

この仮払金は、先に遺産分けで取得したものとされます。

この預貯金の仮払い制度の開始時期(施行日)は、2019年(令和元年)7月1日です。

相続法改正の知識-自筆証書遺言の方式について

2019-05-10

改正前、自筆証書遺言は全文を手書きで書かなければなりませんでした。本文のみならず日付など全てです。少しでも手書きでない部分があると全てが無効とされていました。

遺言は高齢者が書くことが多いのですが、高齢になってくると自書することが難しくなってきます。文字も乱れがちになりせっかく遺言を書いても読み取れないこともあります。ですから、全文手書きを要求する制度は厳格すぎるのではないかという指摘がされていました。国は相続争いを防ぐため自筆証書遺言を活用させたかったのですが、この全文手書きの方式が負担で遺言は一向に広まりませんでした。

そこで、高齢者にとって負担を軽減するため、法改正により自筆証書遺言の方式の緩和をおこないました。自筆証書遺言について一部手書き以外の方法によることが認められたのです。手書き以外の方法でもよくなった部分とは、遺言本文に別添する「財産目録」(財産の特定に関する事項)です。全文ではありません。財産目録の部分についてだけです。

財産目録に記載すべき事項は、土地であれば「所在・地番・地目・地積」、預貯金であれば「金融機関名・支店名・口座番号」です。

財産目録は、方式は特に決められていません。他人の手書き・ワープロでの作成・不動産であれば登記事項証明書・預貯金なら通帳のコピーなどで大丈夫です。

そして、注意しなければならないのはその財産目録には遺言者が署名・押印しなければなりません。すべての目録頁にです。署名・押印がないと無効になってしまいます。

 

この自筆証書遺言の方式の緩和の開始時期(施行日)は、2019年(平成31年)1月13日です。

 

上述のように、法改正により自筆証書遺言はかなり負担が減り書きやすくなりました。ただ、手書きでなくてもよくなったのは財産目録部分についてだけであり、そもそも自分で用意した財産目録が本当に正しく有効なものなのか判断に迷うこともあるかとおもいます。改正後も自筆証書遺言は厳格な様式であることにはかわりなく、少しでも様式に則していなければ無効となって、書いた意味がなくなってしまいます。不安であれば専門家に相談することをお勧めします。

相続法改正の知識-遺言の保管について

2019-05-10

改正前は、自筆証書遺言を書いた場合、それを自分で(あるいは遺言者から保管の委託を受けた者)保管しておかなければなりませんでした。すると、災害や不注意によるなどの紛失、相続人による破棄・隠匿・変造されるおそれがあり、実際にそのような事例が存在します。また、相続人による遺産分割協議後に遺言書が発見されトラブルになるケース、そもそも遺言書を発見してもらえないこともあります。

そこで、遺言の作成を促進するため、法改正により、公的機関による自筆証書遺言の保管制度が創設されました。

 

保管は法務局によりおこなわれます。

遺言者は、住所地・本籍地・不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局に保管を申請します。

このとき、遺言者は自らが法務局に出頭しなければなりません。代理人ではダメです。遺言者が自ら作成した遺言であることを確認するためです。本人確認もおこなわれます。

 

保管申請がなされると、法務局は方式違反の有無を形式審査します。審査内容は、自書・日付・署名・押印・加除訂正の方法のみです。あくまで形式的審査です。内容の有効性までは審査されません。法務局に実質的審査権はないのです。したがって、法務局で保管が認められたからといって、その自筆証書遺言が有効とは限りません。公正証書遺言は内容までチェックしてもらえますが、自筆証書遺言の保管では内容まではチェックしてくれないのです。ここは注意が必要です(もっとも公正証書遺言も絶対有効とは限りませんが)。

 

遺言者の死後、遺言者の相続人・遺言書に受遺者として記載のある者等は、法務局で自筆証書遺言の存否確認が可能です。遺言書情報証明書の請求、あるいは、遺言書の閲覧請求です。あくまで遺言者の死後です。遺言者が死亡する前はできません。遺言の有無・内容を秘密にしておきたい遺言者の気持ちを配慮しているからです。

 

この制度により法務局で保管されている自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認が不要になりました。公正証書遺言と同じく偽造・変造のリスクが少ないからです。

※検認とは、家庭裁判所で遺言書の形状を確認し偽造・変造の防止をおこなう手続きです。申立て・必要書類の用意・立会い等手続きが煩雑で、数か月の期間を要します。法務局での保管をしていない自筆証書遺言は相続手続きの際に検認が必要です。

 

ここまでみると、自筆証書遺言の法務局保管制度は、公正証書遺言に似てきたとおもえるかもしれません。

では自筆証書遺言の法務局保管と公正証書遺言はどのように使い分けるのかという疑問が生じます。

これについては認知症のチェックを利用したいかどうかだといわれています。重度の認知症で意思能力がない者が書いた遺言は無効です。

自筆証書遺言の法務局保管制度では、遺言書の内容のチェックはされないので遺言者の認知症による遺言能力の有無までの判断はされません。

一方、公正証書遺言なら認知症か否かのチェックもおこなわれます。すなわち、認知症の疑いが全くなくこの点について争いなどおきそうにないときは自筆証書遺言の法務局保管制度の利用、認知症の疑いがありこの点について争いがおこる可能性がある場合は後日の紛争予防のため公正証書遺言を利用するのです(ただ、実際には公証人による判断能力の審査が怖い場合にどうしても遺言を書かせたい長男が遺言者である父を法務局に連れて行くなんてことがあるかもしれません)。

ただやはり、認知症以外の遺言の内容までチェックしてもらえる公正証書遺言の方が確実であるため、わたくし個人的には公正証書遺言の方がお勧めではあります。

 

この自筆証書遺言の法務局保管制度の開始時期(施行日)は、2020年(令和2年)7月10日です。

相続法改正の知識-遺留分と遺留分減殺について

2019-05-10

(1)遺留分の金銭債権化(遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求へ)

遺留分とは、法定相続人に認められた最低限保障された相続分です。相続人の生活保障のために認められた制度です。例えば、被相続人が「愛人に全財産を遺贈する」との遺言を書いていたとしても、法定相続人である妻・子などは愛人に対し最低限保障された遺留分を主張し取り返すことができます。この請求のことを遺留分減殺請求といっていました。なお、この場合でも当該遺言が無効になることはありません。遺留分に反する遺言も一応有効です。遺留分は相続人が主張してはじめて具体的な権利が移転するからです。まず第一に被相続人の意思を尊重するということです。

ただし、兄弟姉妹には遺留分はありません。なぜなら相続関係が一番遠いからです。

 

具体的な遺留分については、基本的に遺産の半分(2分の1)を相続人でわけることになります。ただ、あまりないケースですが直系尊属(父・母・祖父母)だけが相続人の場合は3分の1です。

 

今回の相続法改正により、簡単に述べるとこの遺留分減殺請求した後の結果が今までとかわります。

例えば、相続人が妻1人だけで、被相続人たる夫が「愛人に全財産たる不動産を遺贈する」との遺言をのこしていた場合を想定します。改正前は妻が遺留分減殺請求をすると、不動産が愛人と妻の2分の1ずつの共有状態になってしまうのです。不動産が共有状態になると様々な問題が生じます。売却するのが困難になります。もちろん持分だけ売ることは制度上可能です。

しかし、不動産全体ではなく持分だけ買いたい人など実際にはまずいないでしょう。また、事業承継のための不動産や株式を後継者に相続させたい場合、事業承継を円滑にすることができません。そのため、いたずらに紛争を長引かせ複雑化させていました。

そこで、今回の改正により、遺留分権利者が行使できるのは、金銭の支払い請求としました。お金で解決するということです。現物返還が原則であったのが、金銭の支払いを原則としました。呼び名も「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」とかわりました。

これにより、目的物の共有状態はなくなり紛争の早期解決が見込まれます。

遺留分侵害額請求をされた受遺者・受贈者は、まとまった金銭をすぐ用意できない場合は裁判所に支払期限の猶予を求めることができます。

なお、この遺留分侵害額請求は、相続の開始及び侵害する贈与・遺贈があったことを知った日から1年以内に行使しないと時効で権利が消滅します。請求する場合は急いで下さい。

 

(2)遺留分算定方法の見直し

遺留分を算出するための財産の価格は、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価格(遺贈も含む)」に「生前贈与の価格」を加えて「被相続人の債務(借金)合計額」を差し引いた額とされています。

この「生前贈与の価格」について、相続人以外の第三者にされたものについては1年以内にされたものに限定されています。1年以上前に贈与されたものは遺留分の算定の基礎とはされません。

そして、改正前は、相続人についてされた生前贈与はその時期を問わず遺留分を算定するための財産の価格に算入されていました。つまり、はるか何十年も前にされた生前贈与も遺留分を算定するための財産の基礎とされていたのです。これでは第三者である受遺者等は相続人に対する古い贈与を知り得ないのが通常であり、第三者である受遺者等は予想がつかず不測の損害を被るおそれがあります。

そこで、今回の改正により、相続人についてされた生前贈与は相続開始前10年内にされたものについてだけ遺留分を算定するための財産の価格に算入すると制限を設けました。これにより、遺留分侵害額請求される側も予想がつき準備しやすく法的安定性を保つことができます。

ただし、害意がある場合(贈与者・受贈者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合)については、期間制限はありません。そのような場合にまで受贈者を保護する必要がないからです。

 

これら遺留分制度の見直しについての開始時期(施行日)は、2019年(令和元年)7月1日です。

相続法改正の知識-遺産分割前に遺産を処分された場合について

2019-05-10

今回の相続法改正では少し細かい部類に入る改正点になります。

 

相続が発生した場合、相続財産はまず共同相続人全員の共有財産となります。次に、共有状態であると不便ですので共同相続人全員により遺産分割をおこない具体的に相続財産を分配します。そして、この遺産分割の対象とされる財産は、相続開始時に現存し、かつ遺産分割時にも現存していなければなりません。改正前は、もし遺産分割前に共同相続人のうちの1人が相続財産を処分(預金の使い込みや売却)してしまった場合、その財産は遺産分割の対象とはされませんでした。その結果、最終的に、相続財産を処分(預金の使い込みや売却)してしまった相続人の遺産取得額が多くなるという不公平が生ずることがありました。

そこで、遺産分割前に、遺産に属する財産が処分された場合に生じる不公平を是正するための方策が新たに設けられることになったのです。

相続開始後かつ遺産分割前に、共同相続人の1人が遺産に属する財産を処分した場合、「処分をした相続人以外の共同相続人全員の同意」によって、処分された財産も遺産分割の対象となる遺産とみなすことになりました。これにより、実質的な不公平の是正を図ることができるようになりました。

 

具体例をみてみましょう。

被相続人である母が亡くなり、相続人が長男・次男・三男の3人だったとします。相続財産は、預貯金1,000万円と自宅(評価額1,000万円)だったとします。

遺産分割前に長男がキャッシュカードで預貯金1,000万円を全て引き出して使ってしまいました。この場合、遺産分割時に現存する相続財産は自宅(評価額1,000万円)のみです。改正前は、この自宅(評価額1,000万円)だけしか遺産分割の対象とはできませんでした。

家庭裁判所の遺産分割手続きにおいて長男が使い込んだ預貯金1,000万円は考慮されませんでした。別途、地方裁判所に対し不法行為による損害賠償請求か不当利得返還請求を提訴するしかありませんでした。

しかし、改正後は次男と三男の同意があれば長男が使い込んだ預貯金1,000万円も遺産分割の対象とすることができます。これにより次男・三男は別途地方裁判所に提訴する必要はなくなり、家庭裁判所にのみ手続きをすればいいことになります。かなりの負担減になります。

長男の同意はいりません。次男と三男の同意だけで大丈夫です。処分した相続人の同意はいらないのです。

この改正により、使い込みをした長男のように相続財産を処分したものが処分しなかった場合と比べて最終的な取得財産が増えるという実質的な不公平を是正することができます。

 

注意しなければならないのは、相続開始後に相続財産が処分された場合だけという点です。相続開始前に処分されることも結構ありますが、あくまで相続開始後にです。相続開始前の処分については今までと同じように別途地方裁判所(又は簡易裁判所)に不法行為による損害賠償請求か不当利得返還請求を提訴するしかありません。

 

この遺産分割前に遺産を処分された場合の遺産の範囲についての変更の開始時期(施行日)は、2019年(令和元年)7月1日です。

相続法改正の知識-相続人以外の者の貢献について

2019-05-10

被相続人の療養看護に努め、被相続人の財産の維持又は増加について貢献した場合、「寄与分」として本来の法定相続分を超えた財産を相続できます。しかし、今まで、この寄与分は相続人にしか認められていませんでした。相続人以外の者がいくら被相続人の療養看護に努め、被相続人の財産の維持又は増加について貢献したとしても、財産の分配を請求したりすることはできませんでした。

例えば、被相続人に長男・次男と2人の子がいたが長男は既に亡くなっていたので次男だけが相続人とします。長男の妻は被相続人と同居し長年被相続人の介護に努めてきました。それに対し次男は既に実家を出て遠くで生活しておりほとんど実家に顔を出していなかったとします。長男の妻は被相続人の療養看護に努めてきたのに、相続人ではないのでまったく相続財産を取得することはできません。次男が全て相続で財産を取得します。

被相続人の生前には親族としての愛情や義務感に基づき無償で自発的に療養看護等の寄与行為をしていた場合でも、被相続人が死亡した場合にその相続の場面で、療養看護等を全く行わなかった相続人が遺産の分配を受ける一方で、実際に療養看護等に努めた者が相続人でないという理由でその分配に与れないことについては実に不公平といわざるをえません。

そこで、このような不公平を是正するため、相続人以外の者が被相続人の療養看護その他の労務を提供するなどの貢献をした場合に、一定の財産を取得させるための制度を創設しました。

 

具体的には、

被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族は、相続の開始後、相続人に対し、「特別寄与料」の支払いの請求をすることができます

 

親族とは、6親等内の血族、配偶者、及び3親等内の姻族のうち相続人でない者をいいます。相続人なら通常の寄与分で考慮されることになります。

特別寄与料の額は、被相続人が相続開始時に有した財産の価格から遺贈の価格を控除した残額の範囲内においてのみ認められます。したがって、被相続人が全ての財産を遺贈していれば特別寄与料は認められません。また、もともと相続財産がない場合や、プラスの財産があってもマイナスの財産(借金)の方が多い場合も特別寄与料は認められません。

特別寄与料の支払いについて、当事者間に協議が調わないときは家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。ただし、権利行使期間が定められており、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、かつ相続開始時から1年以内に行わなければなりません。

 

この改正により、相続人以外の者の貢献は法的に保護され、不公平は是正されるでしょう。

ただ、相続人以外の者が堂々と権利主張できるようになるので、相続に関する争いが増加するとも予想されます。「争族」を回避するため遺言などにより生前対策の重要性がより高まったとの見方もされています。

 

この相続人以外の者の特別寄与料支払い請求制度の開始時期(施行日)は、2019年(令和元年)7月1日です。

兄弟姉妹が相続人となる場合、亡くなった方の実方・養子先双方の兄弟姉妹が相続人です

2019-04-27

今月は兄弟姉妹の方が相続人である相談が多かったのですが、なぜか似たような理由で大変なことになっている方が続きました。理由は、亡くなった方が他人の養子になっていることを考慮せず相続手続きをしようとしていたからです。

 

養子縁組をすると、養親と養子の間に相続権が発生することはご存知の方が多いです。そして、子供を養子に出した後も、実の親が亡くなった場合に、養子に出した子も実親を相続することもご存知の方が多い印象です。

しかし、兄弟姉妹が相続人の場合(ある方が亡くなってその方に子・両親がいない場合)に、実方(養子に出した方)の兄弟姉妹が、養子先の兄弟姉妹も相続人になることに気づいていない方が実に多いのです。

この場合、養子先の兄弟姉妹を関与させずに実の兄弟姉妹だけで遺産分割協議をしても無効です。あらためてやり直さなければなりません。養子先の兄弟姉妹を外して遺産分割協議をし、不動産の名義変更をしようとしてもできません。銀行で亡くなった方の預金解約をしようとしても認めてくれません。

 

亡くなった兄弟姉妹の養子先の兄弟姉妹と会ったことがない相続人も多いでしょう。亡くなって相続手続きをせず何年も放っておいた場合、さらにその兄弟姉妹も亡くなりその子・孫が相続人になってしまうと相続人の数が膨大になります。相続人が20~30人になることもざらです。連絡先も知らないことが多いでしょう。こうなると大変です。相続人であれば住所を調べることは可能です。しかし、電話番号までは調べられません。住所を調べたら、手紙を出して事情を説明し、連絡をくれるのを待つしかありません。実の兄弟姉妹とも連絡がとれないこともあるのに、見ず知らずの養子先の何人もの兄弟姉妹(あるいは子・孫)とやり取りすることは大変な労力を要します。事実上、不可能なことも多いでしょう。

 

このようにならないよう相続が発生した場合、はやく相続手続きを行いましょう。身内が亡くなったばかりで精神的につらいでしょうが、放っておくと後々大変なことになります。さらには後の自分の相続人(配偶者・子)、またさらにはその先の相続人たち(孫・ひ孫・・)にも大変な迷惑をかけることになってしまいます。

 

また、逆に、養子先の兄弟姉妹が、実方の兄弟姉妹も相続人であることを見落としていることもあります。気を付けましょう。

 

 ※これらは原則です。例外もあります。例えば、養子縁組を解消していた場合や実の親族と親族関係が切れる特別養子縁組があります。

 

 

まとめ

 

兄弟姉妹が相続人となる場合、亡くなった方の実方・養子先双方の兄弟姉妹が相続人である

 

 

誰が相続人となるのか?

2019-04-05

前回3月21日のコラムを読まれたお客さんから、「相続人に絶対に保証される取り分(遺留分)」の前にそもそも誰が相続人となるのかを説明した方がいいのではないかとアドバイスを頂きました。なるほど、私も司法書士になる前は誰が相続人となるのかを知りませんでした。そこで今回は、ある方が亡くなった場合に、誰が相続人となるのかを説明させていただきます。

 

まず配偶者は常に相続人になります

婚姻関係にある場合に限られます。内縁や離婚した元配偶者は相続人とはなりません。

配偶者以外に相続人がいない場合は配偶者だけが相続人となり、他に相続人がいれば配偶者とその者が相続人となります。

 

次に、第1順位から第3順位の相続人が決められています。第1順位の相続人がいれば第1順位の方だけが相続人です。第2順位の方は、第1順位の方がいない場合にだけ相続人となります。第3順位の方は、第1順位・第2順位の方がいない場合にのみ相続人となります。いずれの場合も配偶者は常に相続人となります。

 

第1順位の相続人は子です。

子は全員が相続人となります。子には実子のみならず養子も含まれます。

ここで注意しなければならないのは、婚外子がいる場合です。いわゆる隠し子です。実際に戸籍を調査していると隠し子がみつかることがあります。もし相続人が隠し子の存在に気づかず遺産分割をしてしまった場合、遺産分割協議のやり直しになってしまいます。遺産分割協議は相続人全員でしなければならないからです。注意しましょう。

 

もし被相続人である親よりも先に子が亡くなっていた場合、その子に子(孫)がいれば孫が相続人となります。これを代襲相続といいます。滅多にありませんが、さらに孫も先に亡くなっていて孫に子(ひ孫)がいる場合、ひ孫が相続人となります(再代襲相続)。

被相続人より「先に」子が亡くなっていた場合です。後に亡くなった場合は、単に相続が2回続いたにすぎません(2次相続)。

 

第2順位の相続人は直系尊属(父母・祖父母・・)です。

子(孫・ひ孫含)がいない場合、被相続人の父母が健在なら父母が相続人となります。養親も相続人となります。実親と養親がいる場合、ともに相続人となります(実親との縁がきれる特別養子縁組は養親だけが相続人)。

既に父母が亡くなっていても、祖父母が健在なら祖父母が相続人となります。親等の近い方から相続人となります。

 

第3順位の相続人は兄弟姉妹です。

被相続人に子(孫・ひ孫含)も直系尊属(父母・祖父母・・)もいなければ、兄弟姉妹が相続人となります。被相続人よりも先に兄弟姉妹が亡くなっており、その者に子(おい・めい)がいる場合、おい・めいが相続人となります(代襲相続)。ただ、おい・めいが亡くなっていてもさらにその子が相続人になることはありません。兄弟姉妹については再代襲相続はありません。

 

 

なお、特殊な事例ですが、第1順位の相続人である子には胎児も含まれます。父が亡くなったときに、母のお腹に胎児がいた場合、この胎児も相続人となります。ただし、生きて産まれてくることが条件です。死産の場合、他に子がいなければ親あるいは兄弟姉妹が相続人となります。

 

 

以上の者が相続人となる者です。民法という法律で定められた法定相続人です。これら以外の者は相続人とはなりません。法定相続人以外の者に財産を遺したい方、あるいは、第1順位の方がいるのに第3順位の方に財産を遺したいなどの方は「遺言」を書いておきましょう。

(※ここに記載したことはあくまで原則です。特殊な事情で相続人とならないことがあります。)

 

まとめ

・配偶者は常に相続人となる。

・子(養子含)がいれば子が相続人となる。子が先に亡くなっており孫がいれば孫が相続人となる。

・子がいなければ直系尊属(父母・祖父母・・親等の近い順)が相続人となる。

・子も直系尊属(父母・祖父母・・)もいなければ兄弟姉妹が相続人となる。先に兄弟姉妹が亡くなっていたら甥・姪が相続人となる。

 

 

相続が発生し手続きをしなければならないのだけど、誰が相続人なのかよくわからない、会ったこともない婚外子(隠し子)がいると聞いていたなど、不安な点がある方は専門家に相談してみてください。

相続人には絶対に保障される取り分(遺留分)があるの?その遺留分に反する遺言は無効なの?

2019-03-21

先日、遺言についての相談で次のような質問を受けました。

「遺言を書いて、自分の身のまわりの世話をしてくれている一番下の弟に全財産を相続させたいんだけど、他の兄弟にも最低限保障された相続分があるから遺言は無効で裁判所に訴えられると負けるんだよね?」

これは間違いです。過去にもこのような勘違いをされていた相談者の方が結構いらっしゃいました。

 

相続人には最低限の遺産の取り分が法律により認められており遺言によってもこれは侵害できない、というはなしはよく耳にするとおもいます。この相続人に最低限保障された割合のことを遺留分といいます。

しかし、この遺留分は兄弟姉妹には認められていません。遺留分は、兄弟姉妹以外の者が相続人の場合に認められるのです。つまり、配偶者・子・孫・両親などが相続人の場合に認められるのです。兄弟姉妹だけ遺留分がないのです。なぜなら相続関係が一番遠いからです。

ですから、兄弟姉妹が相続人の場合には遺留分を気にせず遺言により自由に財産を受け取る人を決めることができます。兄弟姉妹以外の第三者に全財産を与えることとしてもかまいません。遺言は兄弟姉妹が相続人の場合に一番威力を発揮するともいえます。

 

ところで、遺留分が認めらる者(子や配偶者など)が相続人の場合に、遺留分を侵害するような内容(愛人に全財産与えるなど)にしても遺言が無効になるようなことはありません。遺留分に反する遺言も有効です。遺留分は相続人が請求してはじめて認められるものだからです。相続人が黙っていても当然に認められるものではないのです。まずは遺言者の意思を尊重するということです。

もし、遺留分を侵害するような遺言を書きたい場合、遺言書に「付言」として、なぜこのような分配にしたのか、争わないでほしい旨を気持ちを込めて記しておきましょう。ただ、生前の関係性をよくしておくことが一番の対策です。

 ※「付言」とは、自分の希望や家族へのメッセージを記載するところで、法的拘束力はなく相続人はこれを実行する義務はありません。ただ、付言を記すことによって紛争が回避できることが多くあります。

 

ちなみに遺留分の割合ですが、基本的に相続人で遺産の半分(2分の1)をわけることになります。ただ、あまりないケースですが直系尊属(父・母)だけが相続人の場合は3分の1です。

具体的な計算方法

 

 配偶者のみの場合

  配偶者の遺留分 = 遺産の総額×1/2

 

 

 配偶者と子供2人の場合

  配偶者の遺留分 = 遺産の総額×1/2×1/2     = 1/4

  長男      = 遺産の総額×1/2×1/2×1/2 = 1/8

  次男      = 遺産の総額×1/2×1/2×1/2 = 1/8

 

 

 配偶者と子供3人の場合

  配偶者の遺留分 = 遺産の総額×1/2×1/2     = 1/4

  長男      = 遺産の総額×1/2×1/2×1/3 = 1/12

  次男      = 遺産の総額×1/2×1/2×1/3 = 1/12

  三男      = 遺産の総額×1/2×1/2×1/3 = 1/12

 

 

 配偶者と直系卑属(父・母)の場合

  配偶者の遺留分 = 遺産の総額×1/2×2/3     = 1/3

  父       = 遺産の総額×1/2×1/3×1/2 = 1/12

  母       = 遺産の総額×1/2×1/3×1/2 = 1/12

 

 

 直系卑属(父・母)のみの場合

  父の遺留分   = 遺産の総額×1/3×1/2 = 1/6

  母       = 遺産の総額×1/3×1/2 = 1/6

 

 

 配偶者と兄弟姉妹の場合

  配偶者の遺留分 = 遺産の総額×1/2  

       (※3/4×1/2=3/8ではありません。勘違いされている方が多いです。)

  兄弟姉妹    = なし

 

 

まとめ

(表記が正確ではありませんが、わかりやすいとおもいあえてこうしました)

 

 ・相続人には、相続財産について最低限保障された一定割合たる「遺留分」がある

 

 ・兄弟姉妹には遺留分はない

 

 ・遺留分を侵害する遺言も有効である

 

 ・遺留分は相続開始後に相続人たる遺留分権利者が請求してはじめて取り戻すことができる

 

 

遺言書を作成しようとおもったが遺留分のことが心配なら専門家に相談してみてください。自身のおもいが将来実現できなかったとしたら遺言を書いた意味がなくなってしまいます。

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