遺産分割協議書の作成方法について

遺産分割協議書とは?なぜ作成が必要なのか

ご家族が亡くなられ、相続人同士で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」。その合意内容を正式な書面として記録したものが「遺産分割協議書」です。これは、単なる話し合いのメモではありません。後の相続手続きを進める上で不可欠な、法的な効力を持つ重要な書類となります。

主な役割は大きく分けて2つあります。

  • 後のトラブルを防ぐ「証拠」としての役割
  • 不動産や預貯金などの名義変更手続きにおける「公的な証明書」としての役割

特に、遺産分割協議によって不動産の取得者を決めた場合には、その内容を証明するため、遺産分割協議書(または遺産分割協議証明書)の提出が求められるのが一般的です。大切なご家族が遺してくれた財産を円満かつスムーズに引き継ぐため、なぜこの書類が必要なのか、その重要性を理解することから始めましょう。

相続トラブルを防ぐ「契約書」としての役割

遺産分割協議は、相続人全員の合意があれば口約束でも成立します。しかし、口約束だけでは「言った、言わない」といった水掛け論に発展し、後々深刻なトラブルになるケースが後を絶ちません。

例えば、「不動産は長男が相続する代わりに、次男には現金300万円を支払う」と口頭で合意したとします。しかし、不動産の名義変更後に長男が現金の支払いを渋り始めたらどうなるでしょうか。口約束では、合意があったことを証明するのは非常に困難です。

遺産分割協議書は、相続人全員が合意した内容を明確に記録し、全員が署名・押印することで、その合意内容を法的に確定させる効力を持ちます。これは、相続人間で交わされる一種の「契約書」であり、後々の紛争を防ぐための最も確実な証拠となるのです。

相続登記の義務化でさらに重要性が増した理由

2024年4月1日から相続登記が義務化されたことにより、遺産分割協議書の重要性はさらに増しています。この法改正により、不動産を相続(遺言を含む。)した相続人は、原則として「相続の開始があったこと」および「不動産の所有権を取得したこと」を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならなくなりました。また、遺産分割協議によって不動産を取得した場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容に基づく登記申請が必要です。

そして、遺産分割協議によって不動産を取得した場合、その登記申請には「誰が不動産を取得したか」を証明する書類として、遺産分割協議書の提出が不可欠です。つまり、期限内に義務を果たすためには、遺産分割協議を成立させ、不備のない協議書を速やかに作成することが前提となるのです。この法改正は、司法書士として特に重要視しているポイントです。

(参照:法務局 相続登記の申請義務化特設ページ

遺産分割協議書を作成するまでの4つのステップ

遺産分割協議書は、話し合いがまとまったらすぐに作成できるものではありません。正確な書類を作成するためには、事前の準備が非常に重要です。ここでは、協議書作成に至るまでの全体像を4つのステップに分けて解説します。この流れを把握することで、何をすべきかが明確になり、手続きへの不安も軽減されるはずです。相続手続きの全体像については、相続発生後の初動5ステップ|司法書士が解説する手続きの全貌で体系的に解説しています。

遺産分割協議書を作成するまでの4つのステップを示したフローチャート。相続人調査から財産調査、遺産分割協議、協議書作成までの流れをアイコン付きで解説。

ステップ1:相続人の調査と確定

遺産分割協議は、相続人全員の参加が絶対条件です。一人でも欠けていると、その協議は無効になってしまいます。そのため、まずは亡くなられた方(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を取り寄せ、法的に誰が相続人になるのかを正確に調査・確定させる必要があります。前妻との間に子がいるなど、ご家族が把握していない相続人が判明するケースも少なくありません。より詳しい手順については、相続人調査・戸籍謄本の取得代行についてをご覧ください。

ステップ2:相続財産の調査と財産目録の作成

次に、被相続人が遺した財産をすべて調査し、一覧表である「財産目録」を作成します。調査対象は、不動産や預貯金、株式といったプラスの財産だけではありません。借金やローンなどのマイナスの財産もすべて洗い出す必要があります。この調査が不十分で、協議書作成後に新たな財産が見つかると、再度協議をやり直さなければならない可能性が出てきます。より具体的な手順については、財産目録の作成についてをご覧ください。

ステップ3:相続人全員での遺産分割協議

ステップ1と2で確定した相続人と財産をもとに、いよいよ遺産の分け方を具体的に話し合います。これが「遺産分割協議」です。必ずしも全員が一堂に会する必要はなく、遠方に住んでいる相続人がいる場合は、電話や手紙、メールなどで協議を進めることも可能です。重要なのは、最終的に相続人全員が合意することです。話し合いの際には、法律で定められた相続割合である法定相続分も参考にするとよいでしょう。

ステップ4:合意内容を書面にする(遺産分割協議書の作成)

相続人全員の合意が形成されたら、その内容を正式な書面にまとめます。この最終段階が、遺産分割協議書の作成です。この後のセクションで、具体的な書き方を詳しく解説していきます。

【ひな形付】遺産分割協議書の具体的な書き方と財産別文例

ここからは、実際に遺産分割協議書を作成する際の書き方を、具体的な文例を交えて解説します。決まった書式はありませんが、誰が読んでも内容を正確に理解でき、後の手続きで不備を指摘されないためのポイントを押さえることが重要です。

基本構成:記載すべき必須項目

まず、遺産分割協議書の骨格となる基本的な記載項目を確認しましょう。

遺産分割協議書

被相続人 〇〇(氏名)
最後の本籍 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番
最後の住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
生年月日 昭和〇年〇月〇日
死亡日 令和〇年〇月〇日

上記被相続人の相続に関し、共同相続人全員で遺産分割協議を行った結果、次のとおり合意したので、これを証するため本協議書を作成する。

第1条(不動産の取得)
次の不動産は、相続人〇〇(氏名)が取得する。
(不動産の表示を記載)

第2条(預貯金の取得)
次の預貯金は、相続人△△(氏名)が取得する。
(預貯金の表示を記載)

第3条(後日判明した財産)
本協議書に記載のない遺産が後日判明した場合は、相続人〇〇(氏名)がこれを取得する。

以上のとおり協議が成立したことを証するため、本協議書を〇通作成し、相続人全員が署名押印の上、各自1通を所持する。

令和〇年〇月〇日

(相続人1)
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名 〇〇 〇〇 (実印)

(相続人2)
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名 △△ △△ (実印)

【文例】不動産(土地・建物・マンション)の書き方

相続財産の中で最も記載に注意が必要なのが不動産です。不動産を特定する情報は、法務局で取得する「登記事項証明書(登記簿謄本)」の記載通りに、一字一句正確に書き写す必要があります。少しでも間違っていると、相続登記の手続きを受け付けてもらえません。

<土地の場合>

(土地)

 所 在  〇〇市〇〇町〇丁目

 地 番  〇〇番〇

 地 目  宅地

 地 積  〇〇.〇〇平方メートル

<一戸建て(建物)の場合>

(建物)

 所 在  〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番地〇

 家屋番号 〇〇番〇

 種 類  居宅

 構 造  木造瓦葺2階建

 床面積  1階 〇〇.〇〇平方メートル   2階 〇〇.〇〇平方メートル

<マンション(敷地権付き区分建物)の場合>

(一棟の建物の表示)

 所 在  〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番地〇

 建物の名称 〇〇マンション

(専有部分の建物の表示)

 家屋番号  〇〇町〇丁目〇〇番〇の〇〇〇

 建物の名称 〇〇〇

 種 類   居宅

 構 造   鉄筋コンクリート造1階建

 床面積   〇階部分 〇〇.〇〇平方メートル

(敷地権の表示)

 土地の符号  1

 所在及び地番 〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番〇

 地 目    宅地

 地 積    〇〇〇.〇〇平方メートル

 敷地権の種類 所有権

 敷地権の割合 〇〇〇分の〇〇

【文例】預貯金・株式・自動車の書き方

不動産以外の財産も、他の財産と明確に区別できるよう、具体的に特定して記載します。

<預貯金>

〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号 〇〇〇〇〇〇〇 (残高全て)

<株式>

〇〇証券株式会社 〇〇支店に預託の下記株式

銘柄 〇〇株式会社 株数 〇〇〇株

<自動車>

下記自動車1台

登録番号 名古屋〇〇〇 あ 〇〇-〇〇

車台番号 〇〇〇-〇〇〇〇〇〇

【文例】代償分割・換価分割を行う場合の書き方

不動産のように物理的に分割できない財産がある場合、特別な分割方法が用いられることがあります。その場合も、協議書にその旨を明確に記載する必要があります。

<代償分割>
一人の相続人が不動産を相続する代わりに、他の相続人に対して現金を支払う方法です。「誰が、誰に、いくらを、いつまでに支払うか」を明記します。

相続人〇〇(氏名)は、第1条記載の不動産を取得する代償として、相続人△△(氏名)に対し、金〇〇〇万円を令和〇年〇月〇日限り、△△名義の下記口座に振り込む方法により支払う。

金融機関名:〇〇銀行 〇〇支店 口座種別:普通預金 口座番号:〇〇〇〇〇〇〇

<換価分割>
不動産などを売却して現金に換え、その現金を相続人間で分ける方法です。「誰が売却手続きを行い、経費を差し引いた後の代金を、どのような割合で分けるか」を明記します。

第1条記載の不動産は、相続人〇〇(氏名)が代表して売却し、売却代金から譲渡費用等の諸経費を控除した残額を、次の割合で各相続人が取得する。

相続人 〇〇(氏名) 2分の1   相続人 △△(氏名) 2分の1

有効な遺産分割協議書にするための7つのチェックリスト

せっかく作成した遺産分割協議書も、法律上の要件を満たしていなければ「無効」となり、法務局や金融機関で手続きを受け付けてもらえません。ここでは、専門家が実務で必ず確認するポイントを、ご自身でセルフチェックできるリスト形式でまとめました。

有効な遺産分割協議書にするための7つのチェックリスト。相続人全員の参加、財産の正確な記載、判断能力の確認など、作成時の注意点をアイコン付きで分かりやすく解説。

①相続人全員が参加し、署名・実印で押印しているか

最も基本的かつ重要なポイントです。戸籍調査で確定した相続人が一人でも欠けていれば、その協議は無効です。また、協議書には相続人全員が署名・押印し、各種手続(特に相続登記や金融機関手続)では、実印での押印や印鑑証明書の提出を求められることが一般的です。

②相続財産は正確に、漏れなく記載されているか

財産の記載が曖昧だったり、誤りがあったりすると、どの財産についての合意なのか特定できず、手続きが滞る原因になります。特に不動産は、登記事項証明書の通りに一字一句正確に記載してください。作成した財産目録と照合しながら、記載漏れがないかも入念に確認しましょう。

③判断能力に不安がある相続人はいないか

相続人の中に認知症などで判断能力(意思能力)が著しく低下している方がいる場合、その方が参加した遺産分割協議は後から無効とされるリスクがあります。このような場合は、安易に協議を進めず、家庭裁判所に申し立てて「成年後見人」を選任してもらうなど、法的な手続きを踏む必要があります。

④未成年の相続人がいる場合、特別代理人を選任したか

親と未成年の子が共に相続人になるケース(例:父親が亡くなり、相続人が母親と未成年の子)では、親が子の代理人として遺産分割協議に参加することはできません。これは、親の利益と子の利益が相反する(利益相反)可能性があるためです。この場合、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てる必要があり、この手続きを怠ると協議は無効となります。詳しくは「未成年者の相続手続きを司法書士が解説|特別代理人が鍵」の記事をご覧ください。

⑤詐欺や強迫によって合意したものではないか

一部の相続人が財産を隠していた(詐欺)、あるいは無理やり署名・押印させた(強迫)といった事情がある場合、その意思表示は後から取り消すことが可能です。しかし、詐欺や強迫があったことを後から立証するのは非常に困難です。少しでも納得できない点がある場合は、安易に署名・押印しないことが重要です。

⑥複数ページの場合、契印(割印)はされているか

遺産分割協議書が2枚以上になる場合は、それらが一体の書類であることを明確にし、ページの差し替えなどを防ぐために、綴じ目に契印(割印)をしておくと安心です。ホチキスで綴じた部分の境目に押印するのが一般的です。

⑦後から見つかった財産の取り決めは記載されているか

どんなに念入りに調査しても、後から遺産が見つかる可能性はゼロではありません。その場合に備え、「本協議書に記載のない遺産が後日判明した場合は、相続人〇〇が取得する」あるいは「相続人全員で改めて協議する」といった一文を入れておきましょう。これがないと、新たに見つかった財産のために、また一から協議をやり直す手間が発生してしまいます。

完成した遺産分割協議書の活用場面

不備なく完成した遺産分割協議書は、様々な相続手続きを進めるための「鍵」となります。具体的にどのような場面で必要になるのかを見ていきましょう。

不動産の名義変更(相続登記)

法務局で不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する「相続登記」手続きにおいて、遺産分割協議書は必須の添付書類です。特に、法定相続分とは異なる割合で不動産を相続する場合には、その合意内容を証明するために不可欠となります。

預貯金の解約・名義変更

銀行や信用金庫などの金融機関で、亡くなった方の預貯金を解約・払い戻しする際にも、遺産分割協議書の提出が求められます。誰がその預金を相続するのかを金融機関が確認するために必要です。詳しくは、銀行口座凍結の解除方法の記事でも解説しています。

株式や投資信託の名義変更

証券会社で、被相続人名義の株式や投資信託の名義を変更する手続きにおいても、遺産分割協議書は同様に必要となります。どの銘柄を誰が相続するのかを明確に示す必要があります。

相続税の申告

相続財産の総額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告が必要です。税務署に提出する申告書には、遺産分割協議書の写しを添付するのが一般的です。特に、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった税負担を軽減する特例を適用するためには、申告期限までに遺産分割が確定し、その内容を証明する協議書が作成されていることが前提となります。相続税の基礎知識については、こちらの記事で詳しく解説しています。

遺産分割協議書の作成は司法書士への相談が安心

ここまで遺産分割協議書の作成方法について解説してきましたが、「自分で作成するのは難しそうだ」「チェックリストを見ても、自分のケースで間違いがないか不安だ」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合は、専門家である司法書士にご相談いただくのが最も確実で安心な方法です。当事務所では、遺産整理業務として、遺産分割協議書の作成を含む相続手続き全般のサポートを行っております。

司法書士に遺産分割協議書の作成について相談する夫婦。専門家から説明を受け、安心した表情を浮かべている。

司法書士に依頼する3つのメリット

  1. 法的に不備のない正確な書類が作成できる
    司法書士は法律と登記の専門家です。特に不動産の記載など、専門的な知識が求められる部分も、法務局や金融機関の要件を満たす正確な書類を作成できます。これにより、手続きのやり直しといった時間的・精神的な負担を防ぎます。
  2. 面倒な戸籍収集や財産調査も任せられる
    遺産分割協議書の作成の前提となる、相続人調査のための戸籍謄本等の収集や、相続財産の調査といった煩雑な手続きも一括で代行いたします。平日の日中に役所や金融機関へ何度も足を運ぶ手間が省けます。
  3. その後の不動産登記までワンストップで対応できる
    司法書士は不動産登記の専門家です。遺産分割協議書作成後、最も重要な手続きの一つである相続登記まで、切れ目なくワンストップでご依頼いただけます。複数の専門家を探す必要はありません。

当事務所にご依頼いただく場合の流れと費用

当事務所に遺産分割協議書の作成をご依頼いただく場合、以下のような流れで進めさせていただきます。

  1. 無料相談:まずはお客様の状況を詳しくお伺いし、最適な手続きをご提案します。
  2. お見積り:ご依頼いただく業務内容と費用を明確にご提示します。
  3. 業務開始:戸籍等の収集、財産調査、遺産分割協議書の文案作成などを行います。
  4. 署名・押印:完成した協議書の内容をご確認いただき、相続人の皆様に署名・押印をいただきます。
  5. 各種手続き代行:作成した協議書を用いて、不動産の名義変更や預貯金の解約などの手続きを代行します。

費用については、事案の内容によって異なります。無料相談の際に、必ず事前にお見積りをご提示しますのでご安心ください。

まとめ:まずは無料相談をご利用ください

遺産分割協議書は、円満な相続を実現し、ご家族が遺してくれた大切な財産を未来へつなぐための非常に重要な書類です。ご自身で作成することも可能ですが、一つでも不備があると、その後の手続きが滞り、かえって時間と労力がかかってしまうことも少なくありません。

当事務所では、「専門家に相談するのは勇気がいる」という方のために、何度でも無料でご相談いただける体制を整えています。少しでもご不安な点があれば、一人で抱え込まず、まずはお気軽にお話をお聞かせください。ともに解決策を探し、皆様の相続手続きが円滑に進むよう、全力でサポートさせていただきます。

 

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