遺言書は必要?作成すべき10ケースとトラブル回避の専門家解説

もしかして、あなたも?遺言書を考えるべきサイン

「もし自分に万が一のことがあったら、残された家族はどうなるだろう…」
ふとした瞬間に、そんな不安がよぎることはありませんか?

特に、

  • 「長年連れ添ったパートナーがいるけれど、籍は入れていない(内縁関係)」
  • 「私たち夫婦には子どもがいないから、財産の行方が心配」
  • 「お世話になった長男のお嫁さんや、可愛い孫にも財産を少し分けてあげたい」
  • 「相続人同士の仲があまり良くないので、揉め事にならないか不安だ」

このようなお悩みやご希望をお持ちの方は、決して少なくありません。そして、その大切な想いを実現し、ご家族を未来のトラブルから守るために、「遺言書」が非常に大きな力を持つことをご存知でしょうか。

この記事では、相続を専門とする私たち司法書士が、「どんな場合に遺言書が必要になるのか」を10の具体的なケースに分けて、わかりやすく解説していきます。読み終える頃には、ご自身の状況と照らし合わせ、「うちはどうだろう?」という漠然とした不安が、「こうすれば安心だ」という具体的な道筋に変わっているはずです。どうぞ、肩の力を抜いて、ご自身の未来と大切なご家族のために、少しだけお付き合いください。

遺言書がないとどうなる?法定相続の現実

「法律で決まっている通りに分ければ、揉めることはないのでは?」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、遺言書がない場合、民法で定められた「法定相続」というルールに従って、相続人とその取り分(法定相続分)が決められます。

しかし、この法定相続は、必ずしもあなたの想いやご家庭の現実に寄り添ったものとは限りません。

例えば、ご自宅の土地や建物といった「不動産」。預貯金のようにきれいに割り切れないため、誰が相続するかで話し合いがまとまらず、最悪の場合、売却して現金で分けるしかなくなり、残されたご家族が住む場所を失ってしまう…といったケースも珍しくないのです。

また、法定相続では、相続人全員で「遺産分割協議」という話し合いを行い、全員の実印と印鑑証明書がなければ、不動産の名義変更や預貯金の解約といった手続きを進めることができません。相続人同士の関係が疎遠であったり、複雑であったりすると、この話し合いがまとまらず、家庭裁判所での調停や審判にまで発展してしまうこともあります。

遺言書は、この法定相続のルールよりも優先されます。つまり、あなたの意思で、誰に、どの財産を、どれだけ残すかを決めることができるのです。それは、残されるご家族を無用な争いから守るための、あなたからの最後の贈り物とも言えるでしょう。

テーブルの上に広げられた複雑な家系図。相続関係の難しさを示しており、遺言書がない場合のトラブルを暗示している。

【診断】遺言書作成、あなたに必要な10のケース

それでは、具体的にどのような場合に遺言書を作成した方が良いのでしょうか。ご自身の状況と当てはまるものがないか、一緒に確認していきましょう。

ケース1:お子さんがいないご夫婦

お子さんがいらっしゃらないご夫婦の場合、遺言書がないと、亡くなった方の財産は配偶者がすべて相続できるわけではありません。

もし亡くなった方のご両親(または祖父母)がご健在であれば、配偶者とご両親が相続人になります。ご両親がすでに他界されている場合は、亡くなった方のご兄弟姉妹(甥・姪も含む)が相続人となります。

長年連れ添った配偶者としては、義理の兄弟姉妹と、住み慣れた自宅や預貯金の分け方について話し合いをしなければならないのです。関係性が良好ならまだしも、疎遠であったりすると、話し合いは難航しがちです。「法定相続分を現金で支払ってほしい」と言われ、やむなく自宅を売却せざるを得なくなる…そんな悲しい事態も起こりかねません。

例えば「全財産を妻(夫)に相続させる」という一文を遺言書に残しておくだけで、残された大切なパートナーの生活を守ることができます。ただ、具体的な事情により想定どおりにならない場合もあるため、専門家と事前に確認してください。

ケース2:内縁の妻(夫)など事実婚のパートナーがいる

長年連れ添い、事実上の夫婦として生活を共にしてきたパートナー。しかし、法律上、内縁関係のパートナーには相続権が一切認められていません。これは非常に重要なポイントです。

つまり、遺言書がなければ、たとえ何十年連れ添ったパートナーであっても、財産を1円も受け取ることができないのです。もし、亡くなった方に兄弟姉妹などの法定相続人がいれば、その人たちがすべての財産を相続することになります。突然、パートナーの親族から家の立ち退きを求められる、といった深刻なトラブルに発展するケースもあります。

大切なパートナーに財産を残すためには、相続人以外の方に財産を渡すには遺言による遺贈が有効な方法の一つです。ただし、生前贈与や家族信託など他の手段もあり、状況に応じて最適な方法を専門家と検討してください。ただし、兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」という最低限の取り分が保障されているため、その点にも配慮した内容にすることが、後のトラブルを防ぐ鍵となります。

ケース3:再婚していて、前配偶者との間に子がいる

再婚されている場合、現在の配偶者やその間のお子さんはもちろん、前配偶者との間のお子さんにも同じように相続権があります。

そうなると、遺産分割協議には、現在の家族と前の家族、両方が参加することになります。普段ほとんど交流がない場合も多く、お互いの感情的なしこりも相まって、話し合いが非常に複雑化・長期化しやすい傾向にあります。

このような状況を避けるため、遺言書で「現在の妻には自宅不動産を」「前妻の子には預貯金を」というように、誰にどの財産を相続させるかを具体的に指定しておくことが極めて有効です。さらに、「付言事項(ふげんじこう)」として、なぜそのような分け方にしたのかという想いや、家族への感謝の気持ちを書き添えることで、相続人全員の納得感を得やすくなり、円満な相続の助けとなります。

ケース4:相続人同士の仲が良くない、または疎遠である

残念ながら、相続をきっかけに家族の関係に亀裂が入ってしまうことは少なくありません。特に、もともと相続人同士の仲が良くなかったり、長年疎遠だったりすると、遺産分割協議の場で感情的な対立が生まれやすくなります。

遺言書がない場合、前述の通り、相続人全員での話し合いと合意が不可欠です。しかし、関係性が悪いと、そもそも話し合いのテーブルにつくことすら難しいかもしれません。連絡を無視されたり、些細なことで意見が対立したりして、手続きが全く進まないという事態に陥りがちです。

遺言書で財産の分け方を明確に定めておけば、相続人同士が直接話し合う必要性を最小限に抑えることができます。遺言書は、財産を分けるだけでなく、家族の関係性を守るための「争いの火種を消す装置」としての役割も果たしてくれるのです。

ケース5:相続人の中に行方不明者や判断能力に不安がある人がいる

相続人の中に、長年連絡が取れない行方不明の方がいたり、認知症などで判断能力が低下している方がいたりする場合、遺産分割協議は非常に困難になります。

行方不明者がいる場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる必要があり、手続きには時間も費用もかかります。判断能力に不安がある場合は、「成年後見人」を選任しなければ、その方が行った法律行為(遺産分割協議への合意など)は無効になってしまいます。

これらの手続きは、残されたご家族にとって大きな負担となります。しかし、遺言書があれば、原則として遺産分割協議自体が不要になるため、これらの複雑な手続きを経ずに、スムーズに相続手続きを進めることができます。これは、残されるご家族の負担を大きく減らす、非常に大きなメリットと言えるでしょう。

難しい顔で登記簿謄本を眺める人物。判断能力に不安がある相続人がいる場合の法的手続きの複雑さを表している。

ケース6:特定の相続人に財産を多く(または少なく)渡したい

「事業を継いでくれる長男に、会社の株式や事業用の土地をすべて相続させたい」
「長年、自分の介護を献身的にしてくれた長女に、感謝の気持ちとして多めに財産を残したい」
「事情があって、特定の相続人には財産を渡したくない」

このような、法定相続分とは異なる割合で財産を分けたいというご希望は、遺言書でしか実現できません。あなたの想いを実現するためには、遺言書が不可欠です。

ただし、注意点もあります。兄弟姉妹を除く法定相続人には、法律で最低限保障された取り分である「遺留分」という権利があります。これを無視した内容の遺言書を作成すると、かえって相続トラブルの原因になってしまう可能性があります。専門家としては、遺留分にも配慮しつつ、どうすればご自身の想いを最大限実現できるか、最適な方法を一緒に考えることが重要だと考えています。

ケース7:孫や子の配偶者など、相続人以外の人に財産を渡したい

目に入れても痛くないほど可愛いお孫さんや、実の娘のように介護をしてくれたお嫁さん。こうした方々に「感謝の気持ちを形にして残したい」と考えるのは、とても自然なことです。

しかし、お孫さんやお子さんの配偶者は、法律上の相続人ではありません。そのため、遺言書がなければ、残念ながら財産を受け取ることはできません。

「孫の〇〇に、学費として100万円を遺贈する」「息子の妻である〇〇に、感謝を込めて預貯金の一部を遺贈する」といった内容を遺言書に記すことで、初めてあなたの感謝の気持ちを形として届けることができます。遺言書は、あなたの「ありがとう」を伝えるための大切な手段でもあるのです。

ケース8:個人事業主や会社の経営者である

個人で事業を営んでいる方や、会社の経営者の方にとって、遺言書はご家族のためだけでなく、事業の未来を守るためにも極めて重要です。

遺言書がないと、事業で使っている土地や建物、自社の株式などが法定相続人に分散してしまいます。そうなると、後継者が安定して経営権を確保できなくなり、事業の継続が困難になる恐れがあります。最悪の場合、会社の意思決定が滞ったり、株式の買取を巡って争いになったりして、従業員や取引先にも多大な迷惑をかけてしまうことになりかねません。

「後継者である長男に、自社株式と事業用不動産のすべてを相続させる」といった遺言書を作成しておくことで、スムーズな事業承継の道を拓き、会社の未来を守ることができます。もちろん、この場合も他の相続人の遺留分への配慮は不可欠です。

ケース9:財産のほとんどが不動産である

相続財産が、現金や預貯金よりも、ご自宅などの不動産の割合が大きいというケースは非常に多く見られます。そして、この「分けにくい財産」である不動産こそが、相続トラブルの最大の原因になりやすいのです。

例えば、相続人が子ども3人で、財産が実家のみの場合を考えてみましょう。遺言書がなければ、3人で共有するか、誰か一人が相続して他の二人に代償金を支払うか、あるいは売却して現金を分けるか、という話し合いをしなければなりません。誰しもが「実家は残したい」と思っても、代償金を支払う資力がなければ、結局は売却するしかなくなってしまいます。

遺言書で「自宅不動産は、同居して面倒を見てくれた長男に相続させる」などと明確に指定しておくことで、このような争いを未然に防ぎ、不動産の共有化という複雑な事態を避けることができます。

「売家」の看板が立てられた日本の家。不動産相続で揉めた結果、家を売却せざるを得なくなった悲しい状況を象徴している。

ケース10:社会貢献のため寄付をしたい

「お世話になった母校に」「活動を応援しているNPO法人に」「生まれ育った自治体に」など、ご自身の財産を社会のために役立てたい、という尊いお考えをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

このような想いも、遺言書がなければ実現することはできません。遺言書がない場合、財産はすべて法定相続人が相続することになります。

遺言書で寄付先と金額を明確に指定する「遺贈寄付」を行うことで、あなたの最後の想いを社会貢献という形で実現できます。その際、手続きをスムーズに進めるために、信頼できる専門家などを「遺言執行者」に指定しておくことを強くお勧めします。

「うちは大丈夫」は本当?遺言書が不要なケースとは

ここまで遺言書が必要なケースを見てきましたが、「では、遺言書がなくても問題ないケースはないの?」と思われるかもしれません。もちろん、絶対に必要とまでは言えないケースも存在します。

例えば、

  • 相続人が一人しかいない(配偶者も子も親も兄弟もいない、子が一人のみなど)
  • 財産が預貯金のみで、相続人全員がその分け方に納得していることが確実である
  • 相続人全員の仲が非常に良く、誰かが多くもらうことになっても揉める心配が全くない

といった状況です。しかし、ここで立ち止まって考えてみていただきたいのです。「今は仲が良いけれど、いざお金が絡んだ時にどうなるかは分からない」「相続人の配偶者などが口を挟んで、話がこじれるかもしれない」といった不測の事態は、残念ながら起こり得ます。

「うちは大丈夫」という思い込みが、かえって未来のトラブルの種になってしまうこともあります。少しでもご不安な点があれば、やはり専門家の視点から客観的なアドバイスを受けておくことが、本当の意味での「安心」に繋がるのではないでしょうか。

あなたの想いを形にするために。司法書士ができること

ここまで読んでいただき、「自分も遺言書を考えた方がいいかもしれない」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。私たち司法書士は、そんなあなたの想いを法的に有効な形で実現するためのお手伝いをする専門家です。

私たちの仕事は、単に書類を作成するだけではありません。あなたの大切な人生、ご家族への想いを丁寧にお聴きし、どうすればその想いが一番良い形で伝わり、円満な相続に繋がるかを一緒に考える「伴走者」です。遺言書の内容のご提案から、公証役場とのやり取り、そして将来、遺言の内容を実現する「遺言執行者」への就任まで、トータルでサポートいたします。

司法書士が相談者の話に親身に耳を傾けている様子。名古屋高畑駅前司法書士事務所の丁寧な対応をイメージさせる。

自筆証書と公正証書、どちらを選ぶべき?

遺言書にはいくつか種類がありますが、代表的なものが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況に合ったものを選ぶことが大切です。

種類メリットデメリットこんな方におすすめ
自筆証書遺言・いつでも手軽に作成できる
・費用がほとんどかからない
・内容を秘密にできる
・形式不備で無効になるリスク
・紛失、偽造、隠匿のリスク
・相続開始後、家庭裁判所の「検認」が必要
・財産が少なく、内容がシンプルな方
・相続関係が単純で揉める可能性が低い方
公正証書遺言・公証人が作成するため無効になる心配がほぼない
・原本が公証役場に保管され安全、確実
・家庭裁判所の「検認」が不要で手続きがスムーズ
・作成に費用と手間がかかる
・証人が2人必要
・財産が多い、内容が複雑な方
・相続トラブルのリスクを低くしたい方
・内縁の妻など相続人以外に財産を遺したい方
自筆証書遺言と公正証書遺言の比較

どちらが良いかは一概には言えません。しかし、ご家族の関係が複雑であったり、相続トラブルを絶対に避けたいというお気持ちが強いのであれば、多少費用がかっても、その確実性から「公正証書遺言」をお勧めします。

名古屋高畑駅前司法書士事務所が「安心」をお届けできる理由

遺言書作成は、ご自身の財産やプライベートなご家族のことをお話しいただく、非常にデリケートな手続きです。だからこそ、誰に相談するかはとても重要です。

当事務所は、大きな事務所ではありません。だからこそ、資格者である司法書士の古島が、必ずあなたに直接お会いし、最初から最後まで責任をもって対応させていただきます。事務員任せにすることは決してありません。

そして、何よりも大切にしているのが、相談のしやすさです。

  • ご相談は、無料です。ご依頼いただくまでは費用は一切かかりませんので、まずはお気軽にお悩みをお聞かせください。実務対応(書類作成、登記申請等)は別途費用が発生しますが、必ず事前に明確な料金をご提示し、ご納得いただいた上で進めます。
  • お仕事でお忙しい方のために、土日祝日や夜間のご相談にも柔軟に対応いたします。
  • 「事務所まで行くのは少し…」という方には、ご自宅やご指定の場所への出張相談も行っております。

私は、司法書士を「先生業」ではなく「サービス業」だと考えています。法律家っぽくない親しみやすさで、あなたの不安な気持ちに寄り添い、難しい法律用語を使わずに、わかりやすい言葉で何度でもご説明することをお約束します。あなたの「想いを込めた」遺言書作りを、心を込めてサポートさせてください。

まとめ:遺言書は、未来の家族への最後の手紙です

遺言書は、単に財産を分けるための法律的な書類ではありません。
それは、あなたがこれまで築き上げてきた大切な人生の証であり、残される愛するご家族へ贈る、愛情と感謝が詰まった「最後の手紙」です。

「ありがとう」「これからも仲良く暮らしてほしい」「あなたのことを頼みます」…
そんな言葉にできない想いを、法的な効力を持たせて形にできるのが遺言書なのです。

もし、この記事を読んで少しでも「うちも考えた方がいいかもしれない」と感じられたなら、それは行動を起こす絶好のタイミングです。まずは第一歩として、そのお悩みやご不安を私たち専門家にお話ししてみませんか?

もちろん、相談したからといって、必ず依頼しなければならないわけではありません。「話を聞いてもらって、少し安心した」それだけでも、私たちは嬉しいのです。あなたのその一歩が、未来のご家族の笑顔を守ることに繋がっています。

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