遺言書の検認について

遺言書を発見したら、まず落ち着いてください

ご家族が亡くなられ、遺品を整理している中で、故人の遺言書が見つかることがあります。突然の出来事に、「これからどうすればいいのだろう?」「この遺言書、勝手に開けてもいいのかな?」と、不安や戸惑いでいっぱいになってしまうのは、当然のことです。

大切な方を亡くされた悲しみの中で、聞き慣れない法律の手続きに直面し、途方に暮れていらっしゃるかもしれません。

でも、ご安心ください。まずは、深呼吸をして落ち着きましょう。故人が残してくれた大切なメッセージを、正しい形で未来へ繋ぐために、今何をすべきか、そして何をしてはいけないのか。私たち司法書士が、一つひとつ丁寧に、順を追ってご説明します。

この記事を最後までお読みいただければ、遺言書の「検認」という手続きの全体像がわかり、ご自身の状況で次に何をすべきかが明確になるはずです。相続の全体像については、相続発生後の初動5ステップ|司法書士が解説する手続きの全貌で体系的に解説しています。

絶対にやってはいけないこと【開封はNGです】

封筒に入っている遺言書を発見したとき、絶対に、ご自身の判断で開封してはいけません。

これは、法律で定められている重要なルールです。民法第1004条3項には、「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。」と定められています。

なぜ、このようなルールがあるのでしょうか。それは、遺言書が故人の最後の意思表示であり、その内容が誰にも改ざんされたり、隠されたりすることなく、正確な形で保全される必要があるからです。「検認」という手続きを経ずに開封してしまうと、後から他の相続人に「内容を書き換えたのではないか?」といった疑いをかけられ、思わぬトラブルに発展する可能性があるのです。

もし、このルールを破って封印のある遺言書を家庭裁判所外で開封してしまうと、5万円以下の「過料(かりょう)」に処される可能性があります。これは罰金とは少し性質が異なりますが、ルール違反に対する制裁であることに変わりはありません。このような不要なペナルティを避け、円満な相続を進めるためにも、必ず正しい手順を踏むことが大切です。家庭裁判所のウェブサイトでも、「遺言書の検認」の手続について案内されています。

もし、うっかり開封してしまったら?【ご安心ください】

「法律のことを知らずに、うっかり封を開けてしまった…」
もし、あなたが今この状況にあるなら、きっと大変な不安を感じていることでしょう。しかし、まずは落ち着いてください。

開封してしまったからといって、遺言書そのものが無効になるわけではありません。

最も大切なのは、その後の対応です。最善の策は、隠したりせず、正直に他の相続人に事情を話し、できるだけ早く家庭裁判所で検認の手続きを進めることです。開封してしまった事実を隠そうとすると、かえって「何かやましいことがあるのでは?」と疑念を抱かれ、信頼関係を損なう原因になりかねません。

誠実な対応を心がけることが、無用なトラブルを防ぎ、故人の意思を尊重した相続を実現するための鍵となります。

遺言書の「検認」とは?目的と対象を理解しよう

「検認(けんにん)」とは、家庭裁判所が、検認期日に出席した相続人等の立会いのもとで遺言書の状態(形状、加除訂正の状態、日付、署名など)を確認・記録する手続きのことです。

この手続きの主な目的は、次の2つです。

  1. 遺言書の偽造・変造を防ぐための証拠保全
    検認によって、その時点での遺言書の内容と状態が公的に記録されます。これにより、その後の書き換えや破棄といった不正行為を防ぎます。
  2. 相続人全員に遺言の存在と内容を知らせる
    家庭裁判所から各相続人に通知がいくため、すべての相続人が遺言書の存在を公平に知ることができます。

ここで非常に重要な注意点があります。それは、検認は、遺言書が法的に「有効」か「無効」かを判断する手続きではないということです。あくまで、遺言書の「状態」を確認する手続きです。もし遺言書の内容に法的な不備があれば、検認が終わった後でも、その有効性をめぐって争いになる可能性は残ります。

遺言書の検認が持つ2つの主要な目的(偽造・変造の防止と、相続人全員への通知)を図解したインフォグラフィック。

検認が必要な遺言書、不要な遺言書

すべての遺言書に検認が必要なわけではありません。どちらに該当するかで、その後の手続きが大きく変わります。

遺言書の種類検認の要否特徴
自筆証書遺言(法務局保管制度を利用していないもの)必要故人が自筆で作成し、自宅などで保管していたもの。
秘密証書遺言必要内容は秘密にしたまま、公証役場で存在のみを証明してもらったもの。
公正証書遺言不要公証人が作成に関与し、原本が公証役場に保管されている信頼性の高いもの。
自筆証書遺言(法務局保管制度を利用したもの)不要法務局が原本を保管し、偽造等のリスクが低いため。
遺言書の種類と検認の要否

ご自身が発見した遺言書がどれにあたるかを確認しましょう。もし「自筆証書遺言」や「秘密証書遺言」であれば、速やかに検認手続きの準備を始める必要があります。それぞれの遺言書の種類によって特徴や作成方法が異なります。

【司法書士が解説】遺言書検認手続きの全ステップ

それでは、実際に家庭裁判所で行う検認手続きの全体像を、4つのステップに分けて具体的に見ていきましょう。各ステップで「何を」「どこで」「なぜ」行うのかを理解することで、安心して手続きを進めることができます。

遺言書検認手続きの4つのステップ(必要書類の収集、家庭裁判所への申立て、検認期日、検認済証明書の取得)を順番に示したフローチャート。

ステップ1:必要書類の収集【戸籍集めが最初の関門】

検認手続きで最も時間と手間がかかるのが、必要書類、特に戸籍謄本類の収集です。なぜなら、法律上の相続人が誰なのかを公的に証明する必要があるからです。主に以下の書類が必要となります。

  • 遺言書の検認申立書
  • 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • (相続人の中に亡くなっている方がいる場合)その方の出生から死亡までの戸籍謄本

特に「出生から死亡までの戸籍」を集めるのは、本籍地が何度も変わっている場合など、非常に煩雑な作業になることがあります。これらの戸籍謄本の取得は、相続手続きの第一歩であり、正確性が求められる重要な作業です。

より詳しい必要書類の一覧については、裁判所のウェブサイトもご参照ください。
参照:裁判所|遺言書の検認

ステップ2:申立て【書類作成と提出】

必要書類がすべて揃ったら、家庭裁判所に検認の申立てを行います。

  • 申立先:遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 申立人:遺言書の保管者、または遺言書を発見した相続人
  • 費用:遺言書1通につき収入印紙800円分、連絡用の郵便切手(金額は裁判所によって異なります)

申立書は、裁判所のウェブサイトから書式をダウンロードできます。この申立てにあたっては、提出する戸籍等により、裁判所に対して誰が相続人であるかを示す必要があります。

ステップ3:検認期日【当日の流れと持ち物】

申立てが受理されると、家庭裁判所から相続人全員に「検認期日」の通知が郵送されます。これは、実際に裁判所で遺言書を開封する日のことです。

  • 出席者:申立人は必ず出席する必要があります。他の相続人の出席は任意です。
  • 持ち物:遺言書(封筒に入ったまま)、申立人の印鑑、身分証明書など、裁判所から指定されたもの。
  • 所要時間:当日の手続き自体は、状況により異なりますが、比較的短時間で終わることが多いです。

検認期日当日、裁判官と相続人(出席者のみ)の立会いのもと、遺言書が開封され、内容が確認されます。この場で遺言の内容について議論したり、有効性を争ったりすることはできません。

ステップ4:検認済証明書の取得【手続き完了の証】

検認手続きが無事に終了すると、遺言書は返却されます。このとき、「検認済証明書」を付けてもらうための申請をします。この証明書は、収入印紙150円を納付することで取得できます。

この検認が必要な遺言書については、遺言の執行をするために、遺言書に「検認済証明書」が付いていることが必要となります。まさに、検認手続きが完了したことの公的な証となる、非常に重要な書類です。この証明書があって初めて、故人の遺産を動かすための次のステップ、例えば銀行口座の凍結解除や不動産の名義変更(相続登記)などが可能になります。

遺言書の検認に関するQ&A

ここでは、遺言書の検認に関してよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 検認手続きにはどれくらいの期間がかかりますか?

A. 一般的には、申立ての準備(戸籍収集など)に約1ヶ月、家庭裁判所に申立ててから検認期日が指定されるまでに約1~2ヶ月かかることが多いです。そのため、全体としては合計で2~3ヶ月程度を見ておくとよいでしょう。
相続には、借金などマイナスの財産を相続しないための「相続放棄」のように、原則3ヶ月以内という期限が設けられている手続きもあります。遺言書を発見したら、他の手続きとの兼ね合いも考え、早めに着手することが重要です。場合によっては相続放棄の期限延長も可能ですが、まずは迅速な行動を心がけましょう。

リビングで司法書士に相談し、安心した表情を浮かべる女性。専門家への相談で悩みが解決に向かう様子を表している。

Q. 検認にかかる費用は総額でいくらくらいですか?

A. ご自身で手続きを行う場合、実費としてかかる費用は以下の通りです。

  • 収入印紙代:800円(申立て)+ 150円(検認済証明書)
  • 連絡用の郵便切手代:約2,000円~3,000円(裁判所や相続人の数により変動)
  • 戸籍謄本等の取得費用:1通あたり450円~750円 × 必要通数分

相続人の人数にもよりますが、総額で数千円から1万円程度が目安となります。

Q. 検認が終わったら、次は何をすればいいですか?

A. 検認済証明書付きの遺言書を受け取ったら、いよいよその遺言書の内容に従って具体的な相続手続きを開始します。主な手続きは以下の通りです。

  • 不動産の名義変更(相続登記)
  • 預貯金の解約・名義変更
  • 株式などの有価証券の名義変更
  • 自動車の名義変更

遺言書で「遺言執行者」が指定されている場合は、その方が中心となって手続きを進めます。指定がない場合は、相続人全員で協力して手続きを行うことになります。

手続きが不安なら、専門家への相談もご検討ください

ここまで遺言書の検認手続きについて解説してきましたが、「戸籍集めが思ったより大変そうだ」「平日に何度も役所や裁判所に行く時間がない」「他の相続人とのやり取りに不安がある」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。

そのような場合は、私たち司法書士のような専門家にご相談いただくのも一つの有効な選択肢です。当事務所にご依頼いただければ、単に手続きを代行するだけでなく、以下のようなメリットをご提供できます。

  • 最も煩雑な戸籍謄本類の収集をすべて代行し、時間と手間を大幅に削減します。
  • 申立書の作成から裁判所への提出まで、正確かつスムーズに進めます。
  • 手続き全体の見通しをご説明し、精神的なご負担を軽減します。
  • 検認後の不動産の名義変更や預貯金解約など、その後の相続手続きまで一貫してサポートします。

相続手続きは、故人を偲ぶ大切な時間の中で行わなければならない、心身ともに負担の大きい作業です。そのご負担を少しでも軽くし、円満な相続を実現するためのお手伝いをさせていただきたいと考えております。当事務所では、ご相談は無料でお受けしておりますので、どうぞ一人で抱え込まず、お気軽にお問い合わせください。

相続手続き全般をまとめてお任せいただける遺産整理業務もございます。

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