遺言書作成のメリット・デメリット|書かないリスクと専門家の選び方

遺言書は「最後のラブレター」。作成する本当の意味とは?

「うちの家族は仲が良いから、遺言書なんてなくても大丈夫」「財産と呼べるほどのものはないし、まだ先の話だ」

もし、あなたが少しでもそう思っていらっしゃるなら、少しだけ私の話にお付き合いいただけないでしょうか。司法書士として、これまで多くのご家族の相続をお手伝いしてきましたが、遺言書があれば避けられたはずの悲しい場面もたくさん見てきました。

遺言書は、単に財産の分け方を決める事務的な書類ではありません。それは、あなたが人生の最後に、愛するご家族へ宛てて書く「最後のラブレター」のようなものだと、私は考えています。

そこには、「これまでありがとう」という感謝の気持ち、「これからの人生も幸せに過ごしてほしい」という願い、そして「みんなで仲良くしてほしい」という祈りを込めることができます。あなたの想いを込めたその一枚が、残されたご家族を未来の不安や争いから守る、何よりの「お守り」になるのです。

この記事では、遺言書を作成するメリットと、少しだけ注意が必要なデメリット、そして、もし遺言書がなかったらどうなってしまうのか、という現実について、専門家の視点から、できるだけ分かりやすくお話ししていきます。あなたの不安が少しでも軽くなり、「安心」への第一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

【比較】遺言書を作成するメリット・デメリット

物事には必ず良い面と、少し注意が必要な面があります。遺言書も例外ではありません。ここでは、遺言書を作成することで得られるメリットと、知っておくべきデメリットを公平な視点で比較し、解説します。

メリット:あなたの想いを未来へ繋ぐ5つの利点

遺言書を作成することで、主に5つの大きなメリットが生まれます。これらは、残されるご家族にとって計り知れない価値を持つものばかりです。

  1. 自分の意思で財産の行き先を決められる
    これが最大のメリットです。「事業を継ぐ長男に自宅と株式を」「介護で世話になった長女には預貯金を多めに」など、ご自身の想いや実情に合わせて、誰にどの財産を遺すかを自由に決められます。遺言書がなければ、法律で定められた割合(法定相続分)が基本となり、あなたの特別な想いを反映させることは難しくなります。
  2. 相続トラブル(争続)を未然に防げる
    「うちは大丈夫」と思っていても、お金が絡むと人の心は変わってしまうことがあります。遺言書がない場合、相続人全員で「遺産分割協議」という話し合いをしなければなりません。この話し合いがまとまらず、今まで仲の良かった兄弟姉妹の関係に亀裂が入ってしまうケースは、残念ながら少なくありません。遺言書で明確な意思を示しておくことは、ご家族が争うことなく円満に相続手続きを終えるための、何よりの道しるべとなります。
  3. 相続手続きの負担を大幅に減らせる
    遺産分割協議は、相続人全員の実印と印鑑証明書が必要になるなど、非常に手間と時間がかかります。相続人の中に遠方にお住まいの方や、連絡が取りにくい方がいると、手続きはさらに煩雑になります。遺言書があれば、原則として遺産分割協議は不要となり、預貯金の解約や不動産の名義変更(相続登記)といった手続きがスムーズに進みます。これは、大切な方を亡くしたばかりのご家族にとって、大きな心の負担軽減に繋がります。
  4. 相続人以外の大切な人にも財産を遺せる
    法律上の相続人ではないけれど、財産を遺したい大切な人はいませんか?例えば、事実婚のパートナー(内縁の妻や夫)、子の配偶者(お世話になったお嫁さんなど)、孫、あるいは特にお世話になったご友人や慈善団体などです。遺言書を使えば、「遺贈」という形で、こうした方々へもあなたの感謝の気持ちを財産という形で遺すことができます。
  5. 残された家族に「安心」を贈ることができる
    遺言書があることで、ご家族は「故人はこう考えていたんだ」と納得し、迷うことなく手続きを進めることができます。財産の分け方だけでなく、「付言事項」として感謝の言葉やこれからの人生へのメッセージを書き添えることも可能です。あなたの最後の言葉は、残されたご家族の心を支え、深い安心感を与えることでしょう。

デメリット:知っておくべき3つの注意点

一方で、遺言書を作成する際には、いくつか知っておくべき注意点もあります。しかし、これらは事前に理解し、対策を講じることで乗り越えられるものがほとんどです。

  1. 作成に手間や費用がかかる
    遺言書は、法律で厳格なルールが定められており、それに従って作成する必要があります。特にご自身で作成する「自筆証書遺言」は、少しの不備で無効になるリスクも。また、より確実な「公正証書遺言」を作成する場合は、公証役場の手数料や、専門家への依頼費用がかかります。
  2. 内容によっては新たな火種になる可能性も
    例えば、「長男に全財産を相続させる」といった極端な内容の遺言書を作成した場合、他の相続人が不満を抱く可能性があります。兄弟姉妹以外の相続人には遺留分(いりゅうぶん)「相続人には絶対に保障される取り分(遺留分)があるの?その遺留分に反する遺言は無効なの?」という権利があり、この権利を侵害された相続人は、多くの財産を受け取った人に対して金銭の支払いを請求できます。これが新たなトラブルに発展することもあるため、遺留分への配慮は非常に重要です。
  3. 一度作成しても、状況の変化で見直しが必要になる
    遺言書を作成した後に、財産状況が大きく変わったり、家族関係に変化があったりすることもあります。例えば、遺産を渡す予定だった方が先に亡くなってしまうケースなどです。そのため、遺言書は一度作ったら終わりではなく、定期的に内容を見直すことが望ましいと言えます。

「うちは大丈夫」が一番危ない?遺言書がない場合の現実

「もし遺言書がなかったら?」その場合、法律は「法定相続」というルールに基づいて、相続人とその取り分を定めています。一見公平に見えますが、このルールが必ずしもご家族の実情に合っているとは限りません。むしろ、このルールがきっかけで、今まで考えもしなかったようなトラブルに発展するケースが後を絶たないのです。

遺産分割協議で揉めている様子の家族。遺言書がない場合の相続トラブルを表現している。

ケーススタディ:遺言書がなくて揉めたAさん一家の悲劇

ここで、遺言書がなかったために起きた、あるご家族の事例をご紹介します。

Aさん(85歳・男性)が亡くなり、相続人は長男(60歳)、長女(58歳)、次男(55歳)の3人。Aさんの財産は、長年家族で暮らしてきた自宅不動産(評価額3000万円)と預貯金600万円でした。

Aさんは生前、「家は、同居して最後まで面倒を見てくれた長男に継いでほしい」と口癖のように話していました。長女と次男も、それを聞いていたはずでした。

しかし、遺言書がなかったため、相続人3人で遺産分割協議を開くことになりました。すると、都会で暮らす次男がこう主張したのです。
「法律によれば、俺たち兄弟は平等に3分の1ずつ相続する権利があるはずだ。兄さんが家をもらうなら、俺と姉さんにはそれぞれ1200万円ずつ現金で払ってほしい」

長男は驚きました。「父さんの面倒を見てきたのは俺たち夫婦だぞ!それに、預貯金は600万円しかないのに、どうやってそんな大金を払えるんだ!」

長女も「私も法定相続分は欲しいけど、お兄さんが家を売ってまでお金を作るのは、お父さんが可哀想だわ…」と板挟み状態に。

話し合いは平行線をたどり、兄弟の間に深い溝が生まれてしまいました。結局、誰も住みたがらない実家は3人の共有名義になりましたが、売却するにも全員の同意が必要なため、固定資産税だけがかかる「負の動産」と化してしまったのです…。

もしAさんが「自宅不動産と預貯金は、同居してくれた長男に相続させる」という一文だけの遺言書を遺してくれていたら、この悲劇は起きなかったかもしれません。

時間も費用も…遺産分割協議で疲弊する相続人たち

Aさん一家の例のように、遺産分割協議がまとまらない場合、相続人たちは精神的にも、時間的にも、そして金銭的にも大きな負担を強いられることになります。

  • 精神的な負担:これまで仲の良かった家族が、財産を巡って対立し、疑心暗鬼になることは、何よりも辛いことです。話し合いが長引くほど、心の傷は深くなっていきます。
  • 時間的な負担:相続手続きには、亡くなった方の出生から死亡までの全ての戸籍謄本を集めるといった、非常に煩雑な作業が伴います。相続人が多ければ多いほど、その手間は膨大になります。仕事や家庭がある中でこれらの作業を進めるのは、想像以上に大変です。
  • 金銭的な負担:話し合いがまとまらず、家庭裁判所での調停や審判に移行した場合、弁護士への依頼が必要になることがほとんどです。その場合、着手金や成功報酬で数十万円から数百万円の費用がかかることも珍しくありません。

遺言書は、こうした未来の様々な負担から、あなたの大切なご家族を守るための、最も有効な手段なのです。

司法書士への依頼が「安心」への近道である理由

「遺言書が大切なのはわかった。でも、どうやって作ればいいんだろう?」そう思われた方も多いかもしれません。もちろん、ご自身で作成することも可能ですが、私たちは司法書士などの専門家へ相談することをお勧めしています。それは、単に手続きを代行するからではありません。あなたの「想い」を、法的に確実な形で未来へ繋ぐための、最も安心できる近道だからです。

法的に無効になるリスクをゼロに近づける

ご自身で作成する「自筆証書遺言」は、手軽な反面、法律で定められた形式が非常に厳格です。例えば、

  • 日付の記載がない、または「令和〇年11月吉日」となっている
  • 押印がされていない
  • 財産の記載が曖昧で、どの不動産や預金口座を指すのか特定できない

といった、ほんの些細なミスで遺言書全体が無効になってしまう恐れがあります。そうなれば、せっかく遺したあなたの想いは水の泡です。

司法書士にご依頼いただければ、こうした形式的な不備をなくし、法的に有効な遺言書の作成をサポートします。特に、信頼性が最も高い「公正証書遺言」を作成する際には、公証人との事前の打ち合わせや必要書類の収集、作成当日の証人としての立ち会いまで、すべて一貫して対応することが可能です。

司法書士が依頼者の話に親身に耳を傾けている相談風景。専門家への相談の安心感を表現。

弁護士・行政書士との違いと司法書士を選ぶメリット

遺言書の相談ができる専門家には、司法書士の他に弁護士や行政書士もいます。それぞれに専門分野がありますが、特に不動産が財産に含まれる場合に、司法書士に依頼するメリットは大きいと言えます。

  • 弁護士との違い:弁護士は「紛争解決」の専門家です。すでにもめてしまっている場合の交渉や裁判代理は弁護士の独占業務です。しかし、遺言書作成のような「紛争予防」の段階では、一般的に司法書士の方が費用を抑えられる傾向にあります。
  • 行政書士との違い:行政書士も遺言書の作成支援を行いますが、不動産の名義変更(相続登記)の代理はできません。そのため、遺言書作成を行政書士に、相続登記を司法書士に、と別々に依頼する必要が出てくる可能性があります。

その点、司法書士は「登記の専門家」です。遺言書の作成支援から、将来発生する不動産の相続登記まで、ワンストップで対応できるのが最大の強みです。あなたの想いを実現する最後の出口まで、責任を持って見届けることができます。

あなたの「想い」を汲み取り、最適な形にする伴走者

私たち名古屋高畑駅前司法書士事務所(代表司法書士:古島信一/所属:愛知県司法書士会/所在地:名古屋市中川区高畑一丁目207番地 アーバンオクムラ301)が何よりも大切にしているのは、法律の知識を一方的にお伝えすることではありません。あなたのこれまでの人生、ご家族への想い、そして未来への願いを、じっくりとお聴きすることです。

司法書士の仕事は「先生業」ではなく、「サービス業」だと考えています。私たちは、法律という道具を使って、あなたの想いを法的に有効な「遺言書」という形に整えるお手伝いをする、いわば「伴走者」です。

「こんなことを聞いてもいいのだろうか」「うまく話せる自信がない」といった心配は一切いりません。当事務所では、資格者である代表司法書士が原則として直接対応し、ご納得いただけるまで丁寧にご相談に応じます(相談は無料です。事前予約をお願いいたします)。難解な法律用語は使わず、あなたが完全に納得できるまで、何度でも丁寧にご説明することをお約束します。

遺言書作成を考え始めたら|まず何から始めるべき?

「よし、遺言書について真剣に考えてみよう」と思っていただけたなら、とても嬉しく思います。しかし、いきなりペンを取る必要はありません。まずは落ち着いて、ご自身の状況を整理することから始めましょう。

ステップ1:自分の財産をリストアップする

まずは、ご自身がどのような財産を持っているのかを正確に把握することが第一歩です。紙とペンを用意して、思いつくままに書き出してみましょう。

【財産リストの例】

  • プラスの財産
    • 預貯金(銀行名、支店名、口座番号、おおよその残高)
    • 不動産(自宅の土地・建物、アパート、畑など。住所や登記情報がわかれば尚良し)
    • 有価証券(株式、投資信託など。証券会社名、銘柄、数量)
    • 生命保険(保険会社名、受取人が誰になっているか)
    • 自動車、貴金属など
  • マイナスの財産
    • 借金(住宅ローン、カードローンなど。借入先、残高)

財産の一覧(財産目録)を作成しておくことで、頭の中が整理され、誰に何を遺したいかを具体的に考えやすくなります。

ステップ2:「誰に」「何を」「どう」遺したいか考える

財産の全体像が見えたら、次に「誰に、何を、どのように遺したいか」という、あなたの希望を整理します。

  • 法定相続人は誰になるのかを確認する。
  • それぞれの相続人に、どの財産を遺したいか、大まかに振り分けてみる。
  • なぜ、そのように分けたいのか?その理由や想いをメモしておく。
  • 「ありがとう」「これからも仲良く」といった、家族へのメッセージも書き出してみる。

この段階では、まだ完璧な案でなくても大丈夫です。あなたの素直な気持ちを書き出すことが、何よりも大切です。

ステップ3:専門家への無料相談を活用する

ご自身の財産と想いがある程度整理できたら、いよいよ最終ステップです。そのメモを持って、専門家である司法書士の無料相談を活用してみましょう。

無料相談では、あなたが考えた内容が法的に実現可能なのか、より良い方法はないか、将来トラブルになりそうな点はないか、といったことを専門家の視点からアドバイスをもらうことができます。

私たち名古屋高畑駅前司法書士事務所の法律相談は、ご納得いただけるまで時間をかけて丁寧に対応いたします。もちろん無料です。ご相談いただいたからといって、作成を無理強いすることは決してありません。まずはあなたの想いをお聴かせいただき、不安を解消するお手伝いができれば、それだけで嬉しく思います。どうぞ、お気軽な気持ちでご活用ください。

まとめ|不安を「安心」に変える第一歩を、私たちがサポートします

ここまで、遺言書を作成するメリット・デメリット、そして作成しなかった場合の現実についてお話ししてきました。

遺言書を作成することは、決して「死」を意識するネガティブな行為ではありません。むしろ、あなたがこれまで築き上げてきた大切な財産と、ご家族への深い愛情を、未来へと確実に繋ぐための、非常に前向きで責任ある行為です。

遺言書一枚で、未来の家族の笑顔を守れるかもしれません。漠然とした将来への不安を、確かな「安心」へと変えることができるかもしれません。

「何から話せばいいかわからない」という方でも大丈夫です。私たち名古屋高畑駅前司法書士事務所は、地元・名古屋市に根ざした、あなたの身近な法律のパートナーです。あなたの想いに真摯に耳を傾け、最適な解決策を一緒に考えさせていただきます。

その第一歩として、まずは無料相談でお話をお聞かせください。あなたからのご連絡を、心よりお待ちしております。

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