結論先出しですが、遺言には必ず遺言執行者を定めておきましょう。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きをする者です。遺言が効力を生じるのは遺言者が亡くなった後ですから、遺言の執行を遺言者自身が行うことは不可能です。そこで、遺言執行者は遺言者が亡くなった後、遺言者にかわって遺言の内容を実現するために必要な手続きをおこなうのです。
遺言に遺言執行者の記載がなくても遺言の効力には何ら問題ありません。その遺言も有効です。しかし、遺言執行者を定めておかなかったために遺言内容が実現できず遺言をかいたことが全く意味をなさなくなってしまうことがあります。
例えばよくある事例です。遺言者の推定相続人が妻と長男・次男の計3人だとします。遺言者たる夫が「預金の全てを妻に相続させる」との遺言を作成しました。そして遺言者たる夫が亡くなり相続が開始したので、妻が遺言書を持って銀行に亡夫名義の預金を解約しにいきました。ところが銀行から「遺言執行者の記載がないので長男・次男の署名押印と印鑑証明書もないと手続きできません」といわれ解約できませんでした。
通常、被相続人名義の預金の相続手続き(解約)をおこなう場合、相続人全員の署名押印と印鑑証明書が必要となります。遺言書がありかつ遺言執行者がいる場合には相続人全員の関与は必要なく、遺言執行者の署名押印・印鑑証明書だけで手続き可能なのです。上記の事例の場合、長男・次男が手続きに応じてくれればいいのですが、長男・次男に「自分にも相続分はあるはずだから手続きには協力できない」といわれれば遺言の内容通りに遺産分けをすることができなくなってしまいます。あらためて相続人全員で遺産分割協議をする必要がでてきます。この亡夫名義の預金口座は凍結されてしまうので、この預金から生活費を捻出していた場合や、相続税の申告期限までに現金化できず納税資金が準備できなくなったら一大事です。これでは手間をかけて遺言を作成したことが無駄になってしまいます。
遺言で相続人以外の方に財産を遺贈していた場合はなおさら揉める可能性が高いでしょう。
もちろん遺言者が亡くなった後に裁判所に対して遺言執行者の選任申立ては可能ですが時間と手間・費用がかかってしまいます。
遺言執行者には未成年者と破産者以外なら誰でもなることができます。相続人あるいは相続人でない受遺者もなることができます。また、司法書士などの法律家もなることができます。紛争が予想される場合には法律家を遺言執行者に指定しておくことが多いです。
以上のように、遺言の内容を必ず実現できるように、遺言には必ず遺言執行者を定めておきましょう。
まとめ
遺言には必ず遺言執行者を定めておきましょう
不安がある方は専門家に相談してみてください。