相続法改正の知識-相続人以外の者の貢献について

被相続人の療養看護に努め、被相続人の財産の維持又は増加について貢献した場合、「寄与分」として本来の法定相続分を超えた財産を相続できます。しかし、今まで、この寄与分は相続人にしか認められていませんでした。相続人以外の者がいくら被相続人の療養看護に努め、被相続人の財産の維持又は増加について貢献したとしても、財産の分配を請求したりすることはできませんでした。

例えば、被相続人に長男・次男と2人の子がいたが長男は既に亡くなっていたので次男だけが相続人とします。長男の妻は被相続人と同居し長年被相続人の介護に努めてきました。それに対し次男は既に実家を出て遠くで生活しておりほとんど実家に顔を出していなかったとします。長男の妻は被相続人の療養看護に努めてきたのに、相続人ではないのでまったく相続財産を取得することはできません。次男が全て相続で財産を取得します。

被相続人の生前には親族としての愛情や義務感に基づき無償で自発的に療養看護等の寄与行為をしていた場合でも、被相続人が死亡した場合にその相続の場面で、療養看護等を全く行わなかった相続人が遺産の分配を受ける一方で、実際に療養看護等に努めた者が相続人でないという理由でその分配に与れないことについては実に不公平といわざるをえません。

そこで、このような不公平を是正するため、相続人以外の者が被相続人の療養看護その他の労務を提供するなどの貢献をした場合に、一定の財産を取得させるための制度を創設しました。

 

具体的には、

被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族は、相続の開始後、相続人に対し、「特別寄与料」の支払いの請求をすることができます

 

親族とは、6親等内の血族、配偶者、及び3親等内の姻族のうち相続人でない者をいいます。相続人なら通常の寄与分で考慮されることになります。

特別寄与料の額は、被相続人が相続開始時に有した財産の価格から遺贈の価格を控除した残額の範囲内においてのみ認められます。したがって、被相続人が全ての財産を遺贈していれば特別寄与料は認められません。また、もともと相続財産がない場合や、プラスの財産があってもマイナスの財産(借金)の方が多い場合も特別寄与料は認められません。

特別寄与料の支払いについて、当事者間に協議が調わないときは家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。ただし、権利行使期間が定められており、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、かつ相続開始時から1年以内に行わなければなりません。

 

この改正により、相続人以外の者の貢献は法的に保護され、不公平は是正されるでしょう。

ただ、相続人以外の者が堂々と権利主張できるようになるので、相続に関する争いが増加するとも予想されます。「争族」を回避するため遺言などにより生前対策の重要性がより高まったとの見方もされています。

 

この相続人以外の者の特別寄与料支払い請求制度の開始時期(施行日)は、2019年(令和元年)7月1日です。

 

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