先日とある相談会で「エンディングノートを書いたから自分の死後に子供たちが遺産分けで揉めることはないだろう」と仰っていた方がおられました。詳しく聞いてみると、この方はエンディングノートと遺言は同じものだとおもっていたのです。
しかし、エンディングノートと遺言は別ものです。エンディングノートは遺言ではありません。この二つの違いは強制力があるか否かです。
遺言は記載された内容に強制力があります。法的拘束力があるのです。原則、遺言と異なる内容で遺産分けすることはできません。
これに対しエンディングノートには強制力がありません。法的拘束力がないのです。法的には一切効力は生じません。いうなれば単なるノートやお手紙です。書いた人の願望にすぎません。
ですので、エンディングノートを書いたからといって自身の死後に相続争いはおきないと安心はできません。死後に遺言ではなくエンディングノートしかなかった場合には、遺産分けにつき相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。自分の死後に遺産について相続人間で揉めてほしくなければ遺言を作成しておいたほうがいいでしょう。
結論先出しにしてしまいましたが、ご存じない方のためにエンディングノートとはなにかを説明させていただきます。
明確な定義はありませんがエンディングノートとは、人生の終末期に迎える死に備えて自身の希望を書き留めておくノートです。具体的には、自分が認知症や重病になったときに備えて家族などに対して自分のこと、財産のこと、連絡先、希望することなどを知らせておきたいことを書き記します。
例えば、
「老後はこう過ごしたい」
「葬儀はこうしてほしい」
「葬儀にはあの人をよんでほしい」
「重要なものはあそこにしまってある」
「自分が死亡したらこうしてほしい」
などです。
また、プロフィールや自分史を書くことも多いでしょう。
エンディングノートでは、人生の終焉だけに目を向けるのではなくこれまでの人生を振り返ります。過去のいろいろな出来事を思い出すことによって、見過ごしてきた幸せに気づくことができ新たな決意をもってこの先の人生を進めることができるという効果が期待できるかもしれません。
エンディングノートを書くメリットは、「家族に思いを託すことができる」ことと「これまでの人生を振り返ることができること」です。
遺言と異なり、書き方が決められているわけではありません。何に書いてもかまいません。書店や文房具店に行けばいろいろな種類のエンディングノートが販売されています。これらのエンディングノートはノート形式で既に項目が印刷されています。ですから簡単にエンディングノートを書くことができます。費用もほとんどかかりません。
しかし、エンディングノートには強制力がありません。法的拘束力がありません。そこに希望が記載されていたとしても相続人がそれに従う義務はありません。ここが遺言との大きな違いです。
まとめ
・遺言に強制力(法的拘束力)はあるが、エンディングノートに強制力(法的拘束力)はない。
いま流行りのエンディングノートではありますが、自分の死後に遺産分けで相続人間での争いを防止したいのであれば遺言を作成しておきましょう。
不安な方は専門家に相談してみてください。