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遺産分割前に相続人の1人からでも預金の払戻しができるようになりました

2019-08-22

令和元年7月1日から法律の改正により、亡くなった方名義の預金払戻しを相続人のうちの1人からでもできるようになりました。

ある方が亡くなった場合、その方名義の銀行の預金口座は凍結されます。この預金口座の払戻しをするには、相続人全員の関与が必要でした。相続人全員の署名・押印・印鑑証明書が必要だったのです。相続人全員の関与がないと預金の払戻しは一切できませんでした。1円たりともです。
相続で揉めて遺産分割協議がまとまらない場合や相続人の中に行方不明者がいた場合、預金の払戻しができませんでした。これにより預金の払戻しをあきらめざるをえなかった方が大勢いらっしゃいました。葬儀費用を亡くなった方名義の預金口座から支払うつもりだった場合、支払えなくなってしまいます。亡くなった夫の預金口座から生活費を捻出していた場合は生活が成り立たなくなってしまいます。

このような不都合を解消するため遺産分割前の相続預金の払戻し制度(預貯金の仮払い制度)が創設されたのです。これにより、相続で揉めて遺産分割協議がまとまらない場合や相続人の中に行方不明者がいる場合などに、相続人のうちの1人からでも預金口座の払戻しができるようになりました。
ただし、預金の全額ではありません。上限が設けられています。具体的には以下の額です。

① 相続開始時の預金額 × 3分の1 × 払戻しを行う相続人の法定相続割合
② 1つの金融機関につき150万円まで

上記①と②のいずれか低い方の額です。

例えば、預金が900万円あり、相続人は妻と子の2人である場合、
900万円×3分の1×2分の1(法定相続分)=150万円 を妻・子はそれぞれ単独で
払戻すことができます。

どんなに預金の額が大きくても1つの金融機関からは150万円までしか払戻しすることができません。
ある金融機関で150万円払戻しても、他の金融機関に預金があればそちらでも払戻しすることができます。
結果として、1つの金融機関に全額を預けていた場合より、複数の金融機関に分散させて預けていた方がたくさん払戻しすることができるということがありえます。

令和元年7月1日からはじまった制度ですが、それ以前に相続が開始していた場合にも適用があり払戻し可能です。
令和元年6月30日より前に、1人で金融機関に払戻し手続きをこころみて断られていた方もいらっしゃるとおもいますが、再度払戻し手続きをしてみてください。
必要な書類は、金融機関によって多少異なりますが、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・相続人全員の戸籍謄本・払戻し手続きをする方の印鑑証明書です。

不安な方は専門家に相談してみてください。

連帯保証人を相続してしまったらどうすればいいのか?

2019-08-01

「亡くなった親が連帯保証人であったので相続人である自分に支払えとの通知がきたのだけど、支払う必要があるの?」との相談をよく受けます。

 

結論からいいますと、支払う義務があります。

連帯保証人は、お金を借りた者(主債務者)と同等の支払い義務を負います。単なる「保証人」はお金を借りた者(主債務者)が支払いできない場合に支払い義務が生じますが、「連帯保証人」はお金を借りた者(主債務者)に支払い能力があろうがなかろうが請求されれば全額支払わなければなりません。つまり連帯保証人は借りた本人と同じ責任を負うということです。お金を貸す方は保証人をつける場合、必ずといっていいほど連帯保証人を要求してきますので、このような場合に保証人といったらまず連帯保証人と考えて間違いありません。

連帯保証人である地位は相続します。法定相続分に従って相続されますので、相続人が妻・子の2人なら、妻・子それぞれが連帯保証人として2分の1ずつの支払い義務を負います。もし支払いの請求を受け支払いできない場合、不動産や給料債権を差し押さえられることもあります。

相続人自身が連帯保証契約をしたわけではないので理不尽とおもわれるかもしれませんが、相続という制度がある以上仕方ありません。

 

では連帯保証人たる地位を相続してしまった場合どう対処すればいいのでしょうか。一般的に以下の方法があります。

 

①相続放棄をする

相続放棄をすれば連帯保証人たる地位は相続されないので支払い義務は免れます。しかし、相続放棄をするとマイナス財産(借金など)だけでなくプラスの財産(預貯金・不動産など)も全て相続できなくなってしまいます。プラスの財産とマイナスの財産を比較してマイナスの財産の方が大きい場合には相続放棄する実益があります(なおまだ連帯保証人に実際に請求がきていない場合には、お金を借りた者(主債務者)に返済の見通しがあるのかどうかよく調査してください)。

また、相続放棄は相続が開始したことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申述しなければならず、3か月を経過すると原則できなくなってしまいます。急いで下さい。

ただ、3か月を経過しても、被相続人が連帯保証人になっていることを知らなかったなど特別な事情があれば相続放棄が認められる可能性があります。あきらめないでください。その場合でも、保証債務があることを知ってから3か月以内におこなう必要があります。

しかし、相続財産を使用・処分してしまった場合、相続を承認したとみなされもはや相続放棄ができなくなってしまいます。例えば、被相続人名義の預貯金を使ってしまったり、不動産の相続による名義変更をしてしまった場合などです。

 

※自身が被相続人たる親の連帯保証人となっていた場合は、相続放棄しても支払い義務が生じます。この場合、相続したのは親のお金を借りた地位(主債務者の地位)であるので相続放棄によって免れるのは親のお金を借りた地位(主債務者の地位)です。自身は連帯保証人の地位を相続したわけではなく、もともと連帯保証人であったので相続放棄しても連帯保証人であり続けます。この場合、以下の②~⑤の方法をもおこなわなければなりません。

 

②支払う

放っておくと利息・遅延損害金が膨らんでいきますのでメリットのある対処方法といえるでしょう。

 

③請求されている金融機関と交渉する

支払いが困難な場合、請求されている金融機関と交渉をします。経済状況が非常に苦しいのであれば利息・遅延損害金をカットしてくれることがあります。それはできなくても分割に応じてくれる金融機関は多いです。

 

④個人再生をおこなう

住宅等の財産を保持したまま、減額された借金を原則3年で分割して返済していき、減額後の金額を完済すれば残債務は返済を免除される制度です。住宅を残したい場合におこなわれます。自己破産と異なり、財産を処分されることはありません。ただ、要件が厳しくあまり使われていないのが現状です。

 

⑤自己破産する

仮に分割が組めたとしても支払いできそうにない場合、自己破産の申立てをおこなうことになります。税金滞納分など一部の債務を除いて借金は0になります。ただ、全ての財産を失うことになるので最終手段です。

 

 

以上のように、連帯保証人の地位を相続した場合の負担は相当なものです。もし連帯保証人を相続してしまったらすぐに専門家に相談してください。

相続する不動産を管理したくないから相続放棄をすることはできるのか?

2019-07-22

相続の相談で「相続する不動産を管理したくないから相続放棄したい」とおっしゃる方がおられます。売りたくても売ることが困難であろう土地とそのうえに建っている空き家であることが多いです。

 

相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がないことになります。プラスの財産より借金の方が多い場合によく使われます。しかし、まれに上記のように借金などのマイナス財産がないにもかかわらず相続した不動産を管理したくないとの理由から相続放棄したいという方がおられます。お気持ちはわかります。使用しない不動産の管理は大変です。固定資産税を払い続けなければなりません。草刈りをしなければなりません。空き家を壊すにも高額な費用がかかります。かといって空き家を放置しておけば倒壊してそれが原因で他人にケガをさせてしまったり他人の財産を損傷させてしまったら、莫大な損害賠償を請求されます。

ですが結論からいいますと、相続放棄をして所有権を手放すことはできるのですが、不動産の管理を免れることはできません。相続放棄をしても、その放棄によって相続人になった者が相続財産の管理を始めることができるまでその財産の管理を継続しなければなりません。これは民法という法律で定められています。

もし、後順位の相続人がいない場合、あるいは後順位の相続人も全員相続放棄して相続人がいなくなってしまった場合、相続財産管理人を選任します。これは、自動的に選任されるわけではなく、原則相続放棄した者が家庭裁判所に相続財産管理人選任の申立てをすることになります。この相続財産管理人が不動産の管理を開始できるまで相続放棄をした者は管理を継続しなければなりません。相続財産管理人がその不動産の管理を開始すればやっと管理から解放されます。

しかし、ここで別の問題が発生します。相続財産管理人は司法書士や弁護士がなることが多いのですが、費用が発生します。相続財産管理人は、相続財産の清算が終了するまで業務が続きます。つまり相続財産の清算が終了するまで相続財産管理人に費用を払い続けることになります。法律では所有者のいない財産は国庫に帰属することになっていますが、国も使えない不動産は欲しくありません。ですから実際にはなかなか引き取ってくれません。結果、相続財産管理人の業務はなかなか終了せず費用がかさみます。これなら、はじめから相続放棄せず自分で管理していた方が費用はかからなかったということになりかねません。この費用がかかるという理由から、相続放棄して所有者がいなくなっても相続財産管理人を選任せず放置されている不動産が少なくありません。

 

ところで、相続放棄は相続があったことを知ってから三か月以内にしなければならず、これを過ぎると原則相続放棄できません。すると、相続開始から三か月が経過してしまった方で「相続放棄できないのなら不動産の所有権を放棄したい」とおっしゃる方がおられます。不動産を一旦相続して、そのうえでこの不動産の所有権自体を放棄したいということです。しかし、現在不動産の所有権は放棄できません。

「自治体に寄付したい」という方もおられますが、自治体もまず引き受けてくれないのが現状です。もちろん、なんらかに利用できる不動産なら引き受けてくれますが、そもそもこのような場合その不動産には利用価値がないことがほとんどです。

 

事実上、不動産の管理の放棄をする方がおられますがやめた方がいいです。上述のように管理責任は免れないので空き家が古くなり倒壊してそれが原因で他人にケガをさせたり他人の財産を損傷させてしまったら莫大な損害賠償を請求されます。その損害賠償債務は相続されます。また、不動産の名義変更を放置しておくと相続人の数が膨れ上がり名義変更の手続きが非常に困難になります。面識がない相続人が増えやり取りが困難になります。相続人の中に海外に行って連絡が困難、その子孫が日本語がわからないなどの問題も生じてくるかもしれません。その不動産を買いたい人が現れたのに名義変更ができず売れないなんてこともありえます。

結果的に自身は困らなかったとしても、子孫が困ることになります。単に問題の先送りです。ですので、相続した不動産を放置するのはやめましょう。相続して、すぐに相続による名義変更をおこない、地道に売却先・引き取り先を探すのがいいとおもいます。利用価値がないとおもわれた不動産も利用方法がみつかることがあります。困難案件を得意としている不動産屋もあります。あきらめずに専門家に相談してみてください。

 

 

まとめ

   

 ・相続放棄しても相続不動産の管理は継続しなければならない

 

 ・不動産の所有権自体を放棄することはできない

私に相続税はかかるの?

2019-06-27

「私に相続税はかかるの?」という質問が多いので、相続税の有無について基礎的な解説をさせていただきたいとおもいます。

 

まず、相続税は全員にかかるわけではありません。一定額以上の遺産があった場合にのみかかってきます。そして、全体のおよそ1割弱の方にしかかからないといわれています。9割の方にはかかりません。当事務所に相談に来られる方も相続税がかからない方のほうが多いです。しかし、自分たちには相続税はかからないだろうと放っておくと実は相続税がかかっており後から無申告加算税や延滞税が課されてしまう可能性があるので注意してください。

 

相続税は、遺産が一定額以上の場合にのみ納めなければなりません。この一定額を「基礎控除」といいます。つまり、遺産が「基礎控除」以下なら相続税はかかりません。相続は残された家族の生活を保障するという面をもっているので、一律全員に相続税をかけると生活がままならない方もいるからです。例えば、一家の大黒柱である働き盛りの夫が当然死亡し、残された妻や幼い子供がいる場合などです。

 

相続税の「基礎控除」は以下のように算出されます。

3,000万円 + (法定相続人の数×600万円)

 

例えば法定相続人が2人なら、

3,000万円 + (法定相続人の数2×600万円)=4,200万円

遺産が4,200万円以下なら相続税はかかりません。

 

3人なら4,800万円です。

4人なら5,400万円です。

5人なら6,000万円です。

 

この「法定相続人」には養子も含まれます。ただし、養子は実子がいない場合2人までしかカウントできません。実子がいる場合は1人だけしかカウントできません。これは、養子を増やして相続税を免れようとする人がいるからです。

 

遺産が自宅と少々の預貯金だけなら相続税はかからないことが多いでしょう。もちろん、自宅が大都市にあるならそれだけで相続税がかかることもありえます。

 

 

遺産総額の計算方法ですが、簡単にいいますと亡くなった被相続人のプラス財産から借金などのマイナス財産を控除して算出します。

 

注意すべきは、民法上は遺産ではないのですが相続税がかかる財産があります。これを「みなし相続財産」といいます。このみなし相続財産を見落とさないように注意しましょう。

主なみなし相続財産

・死亡から3年以内の贈与

・遺贈

・死亡保険金(契約者・被保険者が被相続人で受取人が相続人の場合)

・死亡退職金

 

ただし、死亡保険金と死亡退職金には以下の非課税枠があります。

500万円 × 法定相続人の数

 

例えば、相続人が妻子の2人なら500万円×2=1,000万円までなら非課税です。「法定相続人」には養子も含まれます。ただし、養子は実子がいない場合2人までしかカウントできません。実子がいる場合は1人だけしかカウントできません。

生前の相続税対策として生命保険を使うとよいといわれるのは、この死亡保険金の非課税枠があることが理由の1つです。

 

 

では相続税はいくらかかるのか、計算方法が気になるところですが、長くなるのでそれは別の機会におはなしさせていただきたいとおもいます。

 

 

遺産の総額が上述の「基礎控除」を超える場合、相続税の申告をしなければなりません。配偶者の税額控除など特例により相続税額が0になる場合も「基礎控除」を超える場合は管轄の税務署に申告しなければなりません。

 

そして、相続税の申告は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に亡くなった方の住所地を管轄する税務署に対してしなければなりません。この期限内に申告しないと無申告加算税・延滞税などが発生してしまいます。

ご家族が亡くなられ辛い気持である上に、他の相続手続きなどもあることから、この10か月はあっという間です。ですからはやめに専門家に相談してみてください。

孫に不動産の名義変更をしたい

2019-06-11

死後の相続相談で「孫に不動産の名義変更をしたい」という方が結構いらっしゃいます。

 

まず、孫も相続人とおもわれている方がいらっしゃいますが、違います。子がいたら子は相続人ですが、孫は相続人ではありません(ただし、子が孫より先に亡くなっていたら孫が相続人です・代襲相続)。したがって、被相続人であるおじいさん・おばあさんから孫に直接相続による名義変更(所有権移転登記)はできません。

 

もし、本当に孫に名義変更したいのであれば、一旦相続人である子や妻などに名義変更(所有権移転登記)してから、さらに子から孫に贈与による名義変更(所有権移転登記)をすることになります。いわゆる生前贈与です。なぜならこの場合、被相続人であるおじいさん・おばあさんから子へと、次に子から孫へと不動産の所有権が移転しており、不動産登記簿には権利変動の過程を忠実に再現しなければならないからです。

 

ここで注意しなければならないのは、贈与税がかかる可能性があるということです。また、不動産取得税がかかる可能性もあります。さらに、相続の5倍の登録免許税がかかってきます(不動産の名義変更の際にかかる税金)。

そこで、「いま贈与した方がいいのか、あるいは贈与せず不動産の名義人が亡くなるまで待ってそのときに相続による名義変更をした方がいいのか(生前贈与すべきか否か)」という問題がでてきます。

結論からいいますとケースバイケースです。将来相続税がかかるのか、どのような財産をどれくらい持っているのか、当該不動産の評価額が上昇する見込みがある・あるいは下落する見込みがある、いま贈与しておかないと相続の時に相続人間で争いがおこりそうか、などの諸事情により結論がかわってきます。

例えば多い事例ですと、財産があまりなく相続税がかかりそうにない方であれば、相続時精算課税制度を使えば2,500万円までの贈与なら贈与税はかかりません。結果、相続税も贈与税もかからないことになるので贈与をしておくメリットがあるといえます。

ところで、「相続税よりも贈与税の方が高いから贈与するのは損」というようなことをよく耳にするとおもいます。しかし、実はこれは正しくありません。たしかに、相続税がかからず相続対策が不要な方にとってはその通りとおもわれます。しかし、財産を多く持っている方は贈与の方が有利なことが多いのです。

 

生前贈与すべきかどうかの判断は複雑で難しいので是非とも専門家に相談してみてください。

兄弟姉妹が相続人となる場合、亡くなった方の実方・養子先双方の兄弟姉妹が相続人です

2019-04-27

今月は兄弟姉妹の方が相続人である相談が多かったのですが、なぜか似たような理由で大変なことになっている方が続きました。理由は、亡くなった方が他人の養子になっていることを考慮せず相続手続きをしようとしていたからです。

 

養子縁組をすると、養親と養子の間に相続権が発生することはご存知の方が多いです。そして、子供を養子に出した後も、実の親が亡くなった場合に、養子に出した子も実親を相続することもご存知の方が多い印象です。

しかし、兄弟姉妹が相続人の場合(ある方が亡くなってその方に子・両親がいない場合)に、実方(養子に出した方)の兄弟姉妹が、養子先の兄弟姉妹も相続人になることに気づいていない方が実に多いのです。

この場合、養子先の兄弟姉妹を関与させずに実の兄弟姉妹だけで遺産分割協議をしても無効です。あらためてやり直さなければなりません。養子先の兄弟姉妹を外して遺産分割協議をし、不動産の名義変更をしようとしてもできません。銀行で亡くなった方の預金解約をしようとしても認めてくれません。

 

亡くなった兄弟姉妹の養子先の兄弟姉妹と会ったことがない相続人も多いでしょう。亡くなって相続手続きをせず何年も放っておいた場合、さらにその兄弟姉妹も亡くなりその子・孫が相続人になってしまうと相続人の数が膨大になります。相続人が20~30人になることもざらです。連絡先も知らないことが多いでしょう。こうなると大変です。相続人であれば住所を調べることは可能です。しかし、電話番号までは調べられません。住所を調べたら、手紙を出して事情を説明し、連絡をくれるのを待つしかありません。実の兄弟姉妹とも連絡がとれないこともあるのに、見ず知らずの養子先の何人もの兄弟姉妹(あるいは子・孫)とやり取りすることは大変な労力を要します。事実上、不可能なことも多いでしょう。

 

このようにならないよう相続が発生した場合、はやく相続手続きを行いましょう。身内が亡くなったばかりで精神的につらいでしょうが、放っておくと後々大変なことになります。さらには後の自分の相続人(配偶者・子)、またさらにはその先の相続人たち(孫・ひ孫・・)にも大変な迷惑をかけることになってしまいます。

 

また、逆に、養子先の兄弟姉妹が、実方の兄弟姉妹も相続人であることを見落としていることもあります。気を付けましょう。

 

 ※これらは原則です。例外もあります。例えば、養子縁組を解消していた場合や実の親族と親族関係が切れる特別養子縁組があります。

 

 

まとめ

 

兄弟姉妹が相続人となる場合、亡くなった方の実方・養子先双方の兄弟姉妹が相続人である

 

 

誰が相続人となるのか?

2019-04-05

前回3月21日のコラムを読まれたお客さんから、「相続人に絶対に保証される取り分(遺留分)」の前にそもそも誰が相続人となるのかを説明した方がいいのではないかとアドバイスを頂きました。なるほど、私も司法書士になる前は誰が相続人となるのかを知りませんでした。そこで今回は、ある方が亡くなった場合に、誰が相続人となるのかを説明させていただきます。

 

まず配偶者は常に相続人になります

婚姻関係にある場合に限られます。内縁や離婚した元配偶者は相続人とはなりません。

配偶者以外に相続人がいない場合は配偶者だけが相続人となり、他に相続人がいれば配偶者とその者が相続人となります。

 

次に、第1順位から第3順位の相続人が決められています。第1順位の相続人がいれば第1順位の方だけが相続人です。第2順位の方は、第1順位の方がいない場合にだけ相続人となります。第3順位の方は、第1順位・第2順位の方がいない場合にのみ相続人となります。いずれの場合も配偶者は常に相続人となります。

 

第1順位の相続人は子です。

子は全員が相続人となります。子には実子のみならず養子も含まれます。

ここで注意しなければならないのは、婚外子がいる場合です。いわゆる隠し子です。実際に戸籍を調査していると隠し子がみつかることがあります。もし相続人が隠し子の存在に気づかず遺産分割をしてしまった場合、遺産分割協議のやり直しになってしまいます。遺産分割協議は相続人全員でしなければならないからです。注意しましょう。

 

もし被相続人である親よりも先に子が亡くなっていた場合、その子に子(孫)がいれば孫が相続人となります。これを代襲相続といいます。滅多にありませんが、さらに孫も先に亡くなっていて孫に子(ひ孫)がいる場合、ひ孫が相続人となります(再代襲相続)。

被相続人より「先に」子が亡くなっていた場合です。後に亡くなった場合は、単に相続が2回続いたにすぎません(2次相続)。

 

第2順位の相続人は直系尊属(父母・祖父母・・)です。

子(孫・ひ孫含)がいない場合、被相続人の父母が健在なら父母が相続人となります。養親も相続人となります。実親と養親がいる場合、ともに相続人となります(実親との縁がきれる特別養子縁組は養親だけが相続人)。

既に父母が亡くなっていても、祖父母が健在なら祖父母が相続人となります。親等の近い方から相続人となります。

 

第3順位の相続人は兄弟姉妹です。

被相続人に子(孫・ひ孫含)も直系尊属(父母・祖父母・・)もいなければ、兄弟姉妹が相続人となります。被相続人よりも先に兄弟姉妹が亡くなっており、その者に子(おい・めい)がいる場合、おい・めいが相続人となります(代襲相続)。ただ、おい・めいが亡くなっていてもさらにその子が相続人になることはありません。兄弟姉妹については再代襲相続はありません。

 

 

なお、特殊な事例ですが、第1順位の相続人である子には胎児も含まれます。父が亡くなったときに、母のお腹に胎児がいた場合、この胎児も相続人となります。ただし、生きて産まれてくることが条件です。死産の場合、他に子がいなければ親あるいは兄弟姉妹が相続人となります。

 

 

以上の者が相続人となる者です。民法という法律で定められた法定相続人です。これら以外の者は相続人とはなりません。法定相続人以外の者に財産を遺したい方、あるいは、第1順位の方がいるのに第3順位の方に財産を遺したいなどの方は「遺言」を書いておきましょう。

(※ここに記載したことはあくまで原則です。特殊な事情で相続人とならないことがあります。)

 

まとめ

・配偶者は常に相続人となる。

・子(養子含)がいれば子が相続人となる。子が先に亡くなっており孫がいれば孫が相続人となる。

・子がいなければ直系尊属(父母・祖父母・・親等の近い順)が相続人となる。

・子も直系尊属(父母・祖父母・・)もいなければ兄弟姉妹が相続人となる。先に兄弟姉妹が亡くなっていたら甥・姪が相続人となる。

 

 

相続が発生し手続きをしなければならないのだけど、誰が相続人なのかよくわからない、会ったこともない婚外子(隠し子)がいると聞いていたなど、不安な点がある方は専門家に相談してみてください。

相続人には絶対に保障される取り分(遺留分)があるの?その遺留分に反する遺言は無効なの?

2019-03-21

先日、遺言についての相談で次のような質問を受けました。

「遺言を書いて、自分の身のまわりの世話をしてくれている一番下の弟に全財産を相続させたいんだけど、他の兄弟にも最低限保障された相続分があるから遺言は無効で裁判所に訴えられると負けるんだよね?」

これは間違いです。過去にもこのような勘違いをされていた相談者の方が結構いらっしゃいました。

 

相続人には最低限の遺産の取り分が法律により認められており遺言によってもこれは侵害できない、というはなしはよく耳にするとおもいます。この相続人に最低限保障された割合のことを遺留分といいます。

しかし、この遺留分は兄弟姉妹には認められていません。遺留分は、兄弟姉妹以外の者が相続人の場合に認められるのです。つまり、配偶者・子・孫・両親などが相続人の場合に認められるのです。兄弟姉妹だけ遺留分がないのです。なぜなら相続関係が一番遠いからです。

ですから、兄弟姉妹が相続人の場合には遺留分を気にせず遺言により自由に財産を受け取る人を決めることができます。兄弟姉妹以外の第三者に全財産を与えることとしてもかまいません。遺言は兄弟姉妹が相続人の場合に一番威力を発揮するともいえます。

 

ところで、遺留分が認めらる者(子や配偶者など)が相続人の場合に、遺留分を侵害するような内容(愛人に全財産与えるなど)にしても遺言が無効になるようなことはありません。遺留分に反する遺言も有効です。遺留分は相続人が請求してはじめて認められるものだからです。相続人が黙っていても当然に認められるものではないのです。まずは遺言者の意思を尊重するということです。

もし、遺留分を侵害するような遺言を書きたい場合、遺言書に「付言」として、なぜこのような分配にしたのか、争わないでほしい旨を気持ちを込めて記しておきましょう。ただ、生前の関係性をよくしておくことが一番の対策です。

 ※「付言」とは、自分の希望や家族へのメッセージを記載するところで、法的拘束力はなく相続人はこれを実行する義務はありません。ただ、付言を記すことによって紛争が回避できることが多くあります。

 

ちなみに遺留分の割合ですが、基本的に相続人で遺産の半分(2分の1)をわけることになります。ただ、あまりないケースですが直系尊属(父・母)だけが相続人の場合は3分の1です。

具体的な計算方法

 

 配偶者のみの場合

  配偶者の遺留分 = 遺産の総額×1/2

 

 

 配偶者と子供2人の場合

  配偶者の遺留分 = 遺産の総額×1/2×1/2     = 1/4

  長男      = 遺産の総額×1/2×1/2×1/2 = 1/8

  次男      = 遺産の総額×1/2×1/2×1/2 = 1/8

 

 

 配偶者と子供3人の場合

  配偶者の遺留分 = 遺産の総額×1/2×1/2     = 1/4

  長男      = 遺産の総額×1/2×1/2×1/3 = 1/12

  次男      = 遺産の総額×1/2×1/2×1/3 = 1/12

  三男      = 遺産の総額×1/2×1/2×1/3 = 1/12

 

 

 配偶者と直系卑属(父・母)の場合

  配偶者の遺留分 = 遺産の総額×1/2×2/3     = 1/3

  父       = 遺産の総額×1/2×1/3×1/2 = 1/12

  母       = 遺産の総額×1/2×1/3×1/2 = 1/12

 

 

 直系卑属(父・母)のみの場合

  父の遺留分   = 遺産の総額×1/3×1/2 = 1/6

  母       = 遺産の総額×1/3×1/2 = 1/6

 

 

 配偶者と兄弟姉妹の場合

  配偶者の遺留分 = 遺産の総額×1/2  

       (※3/4×1/2=3/8ではありません。勘違いされている方が多いです。)

  兄弟姉妹    = なし

 

 

まとめ

(表記が正確ではありませんが、わかりやすいとおもいあえてこうしました)

 

 ・相続人には、相続財産について最低限保障された一定割合たる「遺留分」がある

 

 ・兄弟姉妹には遺留分はない

 

 ・遺留分を侵害する遺言も有効である

 

 ・遺留分は相続開始後に相続人たる遺留分権利者が請求してはじめて取り戻すことができる

 

 

遺言書を作成しようとおもったが遺留分のことが心配なら専門家に相談してみてください。自身のおもいが将来実現できなかったとしたら遺言を書いた意味がなくなってしまいます。

自筆証書遺言の方式緩和についての注意点

2019-03-09

先月、とある施設での相続・遺言相談会で、ある相談者の方から「法律の改正で今年から遺言書は手書きでなくパソコンで作ってもよくなったんだよね?」と聞かれました。

 

しかし、これは間違いです。以下、詳しく説明します。

 

今まで、自筆証書遺言は全文を手書きで書かなければなりませんでした。日付など、たとえほんの一部分だけ手書きでなくても無効でした。

それが、2019年1月13日から、一部手書きでなくてもよいと緩和されました。その一部手書きでなくてもよいとされたのは、「財産目録」の部分です。「財産目録」のみ、パソコンで作成したり、銀行の通帳のコピーを添付したり、不動産の登記事項証明書のコピーを添付してもよくなったのです。

自筆証書遺言の本文は、従来通りすべて手書きでなければなりません。この点に気を付けて下さい。

 

さらに、先日別の相続・遺言相談会ではこんなことがありました。ある相談者の方から「遺言書を書いたので持ってきたからみてほしい」といわれたのでみてみると非常によくできていました。改正により「財産目録」は手書きでなくコピーでいいことも知っておられ、不動産の登記事項証明書のコピーが添付されており、私は「すごい!」と驚かされました。

しかし、よくみてみるとその「財産目録」に不完全な部分がありました。このままではその遺言は無効でした。その不完全な部分とは、財産目録に署名・押印がない点です。

この「財産目録」には遺言者が署名・押印しなければなりません。しかもすべてのページにです。これは忘れがちです。気を付けて下さい。

 

まとめますと

・2019年1月13日から

自筆証書遺言のうち、「財産目録」の部分については、手書きでなくパソコンで作成したり、銀行

 の通帳のコピーを添付したり、不動産の登記事項証明書のコピーを添付したりしてもよくなった

その「財産目録」には、全てのページに署名・押印しなければならない

 

一見、改正により自筆証書遺言が書きやすくなったようにおもえますが、かえって書き方が複雑になり、無効な遺言書が増えてしまうのではないかと危惧しております。やはり、確実な遺言を残すのなら少々費用はかかりますが公正証書遺言の方がよいとおもいます。公正証書遺言なら、形式・内容のチェックが入るのみならず、偽造・紛失・相続開始後に誰にも発見されないというリスクも避けられます。仮に自筆証書遺言にするにしても、書き終えたら一度専門家にチェックしてもらうことをお勧めします。

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